企業のバックオフィスや情報システム部門には、日々社内から多くの問い合わせが寄せられていることと思います。
交通費や出張費の申請の仕方から、家族の異動、産休手続きの問い合わせ、業務で使うパソコンの操作方法まで、その内容は多岐に渡ることでしょう。
社内からの問い合わせに応えながら、業務を効率的に進めるにはどのような対策を行えばよいのでしょうか?今回は、よくある質問をまとめることで問い合わせ件数を減らす社内FAQの作り方と、そのメリット・デメリットについて解説します。
目次
社内FAQとは
FAQとは、「Frequently Asked Questions(よくある質問)」を略した言葉です。形式としてはQ&Aの形になっており、よくある質問とそれに対する回答が「対」で記載されています。今では企業のホームページにもカスタマーサポートのメニューとして用意されるようになり、多くの人が疑問に思うような簡単な質問はFAQを見ればわかるようになっています。
そして多くの人が疑問に思うような簡単なQ&Aの社内版が「社内FAQ」です。よくある社内の問い合わせ内容をFAQで作っておけば、問い合わせがあったときでも社内のポータルサイトに置いてあるFAQを見てもらうことで、バックオフィスの担当者は回答の手間が省けます。
ある調査によれば、情報システム部門やバックオフィスの担当者は、仕事の1/3が社内からの問い合わせ対応だという報告があります。毎回同じような質問に対応して時間を使うよりも、問い合わせ対応の時間を少しでも減らし、コア業務に専念できるように工夫をしていくことが望まれます。社内FAQの作成は問い合わせの数を減らし、担当者の貴重な時間を節約することに有効な手段なのです。
エクセルを使った社内FAQの作り方
社内で使うFAQは、特殊なツールを用意することなく一般的な表計算ソフトやエクセルで作ることが可能で、作成方法もとても簡単です。「問い合わせNo」「大分類」「中分類」「小分類」「質問」「回答」に分けて、行と列で整理していけばすぐに作成できます。具体的には以下のような手順で作成していけば良いでしょう。
何のためのFAQか目的を明確にする
経理、業務、営業などの部門別に、どのような目的でFAQを作るか決めます。いくつもの部署が共同で使うようなFAQを作ると煩雑になり、自分が知りたい質問を探すのに苦労します。FAQは部門別に作り、質問の内容を分類していきます。
今までにあった質問を収集、分類(大分類、中分類、小分類に分ける)する
今までに問い合わせのあった質問を、「大分類」「中分類」「小分類」に分けて整理します。実際にエクセルのファイルで質問を探すときには検索機能を使うので問題ありませんが、この分類は質問の整理やメンテナンスを目的として行うものです。
同様の質問がひと目でみられるように問い合わせNo.をつける
使いやすいFAQは、同様の質問がひと目で見られるように並んでいるものです。パソコンでFAQの内容を検索したときに一画面で同分類の質問が表示されれば、求めている回答まで効率的にたどり着けるからです。質問を記載していく場合には、エクセルのソート機能で似たような質問が近くに並ぶように問い合わせNo.をつけていきましょう。
分類ごとに模範的な回答を担当者に作成してもらう
質問が整理できたら、質問に対して模範的な回答ができる担当者に作成してもらいましょう。これでFAQが完成します。
社内FAQの管理者を決める
質問の内容によっては、法令の改正や社内の組織変更などで回答を変更する必要があります。一度作ったFAQはそのまま永続的に運用するのではなく、定期的に内容を更新することが大切なのです。内容が古くて役に立たなくなったFAQは誰も利用しません。社内FAQが完成したら管理者を決め、定期的に内容の見直しを行うようにしましょう。
社内FAQを共有サーバなどに設置する
できあがった社内FAQを共有のサーバや社内のポータルサイトに置き、運用を開始します。運用開始時にはFAQを設置したことを社内に広く知らせ、活用促進を行います。
定期的に管理者が更新する
管理者を決めたら定期的にメンテナンスを行い、常に最新の情報が載った社内FAQの運用を行います。
エクセルを使った社内FAQのメリット・デメリットについて
簡単に作成や運用ができる社内FAQですが、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
エクセルを使った社内FAQのメリット
ほぼ無料で作成できる
FAQ作成のために専用のアプリやツールなどを購入する必要がありません。マイクロソフトのオフィスや、他のオフィススイートであっても表計算ソフトがあれば作成できます。
簡単に作成できる
作るのに特殊な知識や技術は必要ありません。セルごとに質問と回答を記入していけば、誰でも作ることができます。また必要に応じて図や写真を挿入できるため、工夫次第でわかりやすいFAQを作れます。
操作方法が簡単で誰でも使える
使用に際しても、操作方法が簡単で慣れたツールなので誰でも使えるでしょう。ITに詳しくない人が社内にいても、すぐに操作を覚えられます。
エクセルを使った社内FAQデメリット
ファイルが重くなる
情報量が多くなると、ファイルが重くなり使い勝手が悪くなることがあります。図や写真の掲載は必要最小限に抑えましょう。
同時編集ができない
エクセルを含むオフィス系アプリは、複数の作業者が同時に編集することができません。メンテナンスは管理者のみが行うような、運用上の決まりを作っておきましょう。
誤操作によるファイル削除の可能性がある
ファイル内容の変更は表計算ソフトの機能で制御(保護)できますが、ファイル自体の削除は防ぐ方法がありません。過失または誤操作でファイルを削除してしまう可能性もあります。FAQのファイルはバージョン管理を行い、かならずバックアップを別の場所に保管しておきましょう。
エクセルの便利機能を活用する方法
社内FAQをエクセルで作成する際、情報を整理しやすく、検索性を高めるための機能活用は非常に重要です。エクセルのフィルター機能や条件付き書式、関数、VBAを活用したFAQ作成方法について具体的に解説します。
フィルター・検索機能の活用
エクセルに蓄積されたFAQデータは、量が増えるほど目的の情報を探し出すのが困難になります。そういった場合は、フィルター機能を活用するとよいでしょう。特定のキーワードやカテゴリーでデータを絞り込むことで、必要な情報を迅速に見つけられます。例えば、「人事関連」「システムトラブル」などのカテゴリーごとにフィルターを設定しておけば、関連するFAQだけを表示できます。
さらに、条件付き書式を利用すれば、重要な質問や回答を視覚的に強調できます。例えば、よくある質問を特定の背景色でハイライトしたり、未解決の質問を赤字で表示したりすることで、FAQの利用者が優先的に確認すべき情報を一目で把握できるようになります。
エクセルの関数・VBAの活用
エクセルの関数や機能を拡張するプログラミング言語のVBA(Visual Basic for Applications)を活用することで、FAQの検索性をさらに向上させ、管理を効率化できます。
例えば、ハイパーリンク関数を使えば、FAQシート内の特定の質問や回答、あるいは外部のWebページに直接リンクを設定できます。これにより、関連情報へのアクセスが容易になり、FAQの利便性が向上します。
また、簡単なVBAコードを記述することで、FAQの自動検索システムを構築することも可能です。例えば、キーワードを入力すると、関連する質問と回答を自動的に表示する検索ボックスを作成できます。これにより、FAQの検索効率が大幅に向上し、利用者の負担を軽減できます。
これらのエクセル機能を組み合わせることで、社内FAQはより使いやすく、効率的な情報共有ツールへと進化します。FAQの作成・管理にこれらのテクニックをぜひ活用してみてください。
社内FAQの運用のコツ
社内FAQは、作成して終わりではありません。継続的な運用と改善によって、その価値を最大限に引き出すことができます。ここでは、FAQ運用のコツについて解説します。
運用開始後の改善サイクル
FAQは、常に最新の状態に保つことが重要です。そのためには、定期的な見直しと改善が欠かせません。
見直しの頻度
FAQの見直し頻度は、組織の状況やFAQの利用頻度によって異なりますが、一般的には、少なくとも四半期に一度は見直しを行うのがおすすめです。特に、組織変更や業務プロセスの変更があった場合は、速やかにFAQを更新する必要があります。
新しい質問の追加方法
新しい質問は社員からの問い合わせやアンケート調査などを通じて収集します。FAQの作成担当者が内容を確認し、既存のFAQに追記するか、新しいFAQとして追加しましょう。その際、質問の内容だけでなく回答の正確性や分かりやすさもあわせて確認することが重要です。
また、FAQの利用状況を分析することで、どのFAQがよく利用されているか、利用されていないかを把握できます。利用されていないFAQは、内容を見直したり、削除したりするなど、改善策を検討しましょう。
活用を促す社内周知の方法
FAQの活用を促すためには、多角的な周知方法が不可欠です。まず、新入社員研修でFAQを紹介し、入社時からその存在と利用方法を浸透させることが重要です。
次に社内SlackやTeamsなどのコミュニケーションツールを活用し、定期的にFAQの存在をリマインドすることで、日常的な利用を促進します。
さらに、社内ポータルサイトやイントラネットなど、社員が頻繁にアクセスする場所にFAQへのリンクを設置することで、必要な時に容易に情報へアクセスできる環境を整備しましょう。
他のFAQ作成ツールとの比較
社内FAQの作成には、エクセル以外にも様々なツールが存在します。ここでは、代表的なツールを比較し、それぞれの特徴とエクセルが最適なケースについて解説します。
エクセルは、手軽にFAQを作成できるだけでなく、データ分析や高度なカスタマイズにも対応できる柔軟性の高いツールです。ツールの選択は、FAQの規模や用途、予算などを考慮して、最適なものを選びましょう。
Googleスプレッドシートとの比較
Googleスプレッドシートは、エクセルと同様に表計算ソフトですが、リアルタイム共同編集が可能です。複数人が同時に編集できるため、FAQの作成・更新作業を効率化できます。しかし、高度なカスタマイズ性やVBAによる自動化機能はエクセルに劣ります。
エクセルが最適なケース
- 高度なデータ分析や複雑な関数を使用する場合
- VBAによる自動化処理が必要な場合
- オフラインでの作業が多い場合
ConfluenceやNotionとの比較
組織内での情報共有を促進するConfluenceやNotionは、ナレッジベースやドキュメント管理ツールとして利用されます。これらのツールは、情報共有や共同作業に特化しており、FAQだけでなく社内Wikiやプロジェクト管理など多岐にわたる用途に利用できます。しかし、データ分析や高度な検索機能は、エクセルやFAQ専用ツールに劣る場合があります。
エクセルが最適なケース
- FAQのデータ分析や集計を重視する場合
- 表計算ソフトの操作に慣れているユーザーが多い場合
- 既存のエクセルファイルを活用したい場合
FAQ専用ツールとの比較
ZendeskやHelpfeelなどのFAQ専用ツールは、FAQの作成・管理に特化しており、高度な検索機能や分析機能、多言語対応、顧客サポート機能などを備えています。これらのツールは、大規模なFAQや顧客向けのサポートFAQに最適です。しかし、導入コストや運用コストが高くなる場合があります。
エクセルが最適なケース
- 小規模なFAQや社内向けのFAQを作成する場合
- 初期費用を抑えたい場合
- シンプルな機能で十分な場合
社内からの問い合わせに効率的に対応するためには

サービス名 | Re:lation(リレーション) |
提供会社 | 株式会社インゲージ |
料金 | 初期費用:要問い合わせ 最低月額料金:19,800円 |
無料期間 | あり(10日間) |
- 複数チャネルの問い合わせをまとめて管理できる
- 対応状況がひと目でわかる
- チームで情報共有ができる
社内FAQの設置で社内からの問い合わせを減らすことはできますが、完全に無くすことは困難です。また、いかにエクセルで内容を網羅しても、問い合わせ管理の効率化には限界があります。
単純な内容の問い合わせにはFAQが有効なのですが、複雑な内容の問い合わせにはやはり人が回答する必要があります。そのため、社内からの問い合わせを効率的に管理するには、問い合わせ管理システムの導入がおすすめです。
株式会社インゲージの提供する「Re:lation(リレーション)」であれば、対応遅れや回答漏れ、二重回答などが防げるだけでなく、問い合わせの件名などですぐに検索ができるため、効率的に回答できます。また上長の承認機能が実装されているので、経験の浅い社員でもすぐに問い合わせに対応できます。
また、メールだけでなく電話やチャットにも対応しています。専用の問い合わせ管理システムであれば、さまざまな問い合わせを一元管理でき、効率的な問い合わせ管理が可能になります。
社内FAQと問い合わせ管理システムの併用がおすすめ
社内FAQを詳細に作ったとしても、問い合わせを完全になくすことは難しいでしょう。社内には次々と新しい事業や業務が生まれ、常に変化し続けているからです。
問い合わせ管理システムを使って効率的に対応し、ここから生まれた新しい問い合わせを社内FAQに追加していくなど、双方を併用して問い合わせの削減と効率化をするのがおすすめです。
問い合わせ管理ツール「Re:lation」資料ダウンロード