近年、活発になり需要が増えつつあるSNSマーケティングを運用をする上で、欠かせない手法である「ソーシャルリスニング」。これはTwitterやFacebookをはじめとしたソーシャルメディアでユーザーの反応を伺う調査方法です。言葉は聞いたことがあっても、実際どのように運用をするのかイメージが湧かない人もいるでしょう。そこで今回は、ソーシャルリスニングの概要や導入などについて解説していきます。実際のソーシャルリスニングツールも紹介するので、参考にしてみてください。
ソーシャルリスニングとは
ソーシャルリスニングは、ソーシャルメディア(SNS)で収集した声をもとに分析し、マーケティングに活用することです。
一言でソーシャルメディアといっても、ブログや掲示板などのWEBサイトから発信された情報も含まれます。つまり、インターネットを介したサービス全体のことを指していると言ってもいいでしょう。
ここでは、ソーシャルリスニングの概要について解説していきます。
ソーシャルリスニングで調査できること
ソーシャルリスニングは、通常のアンケート調査などと違いユーザーが自由に発言した声を拾います。そのため調査できることの範囲はとても幅広く、ユーザーが愚痴としてこぼした細かい情報さえも拾い集めることが可能なのです。
具体的にソーシャルリスニングで収集したデータは、
- 顧客のニーズ
- マーケティングの効果測定
- 企業のブランド調査
などに活用します。
まず特定のキーワードから口コミ情報を集めることで、顧客が何を求めているのかが浮き彫りになります。例えば、京都に旅行に行くのはどんな時期が最適で、なんのために訪れるのかなどです。
「京都といえば紅葉だから秋がおすすめ」という意見が多数あれば、時期は秋で紅葉を見に訪れることがわかります。
またソーシャルメディアでは、いいねやコメントなどでユーザーの反応を伺うことができるため、マーケティング施策の効果測定が可能です。
例えば、大々的にTwitterやInstagramで商品やサービスのPR行います。すると、PR投稿に対しての反応が、いいねやリツイートの数で表れるのです。さらには、どれだけ多くの人に拡散されたかの指標にもなります。
最近では、インフルエンサーマーケティングという影響力のある人に商品などを宣伝してもらう手法が注目されており、ソーシャルメディアでの調査は一般的になりつつあるのです。
ソーシャルリスニングのメリット
ソーシャルリスニングのメリットは、なんといってもユーザーの生の声を直接聞けること。ソーシャルメディアによっては、匿名性が高くユーザーからの正直な声を聞くことができるため参考になることも多いのです。
そして消費者の声を聞くことで、企業やブランド、提供している商品やサービスをより良いものに改善できます。
通常のアンケート調査などでは、ユーザーが調査対象について興味があるのかはわかりません。しかしソーシャルメディアで発信するユーザーの多くは、自分の好きなものや嫌いなものに対しての反応を示します。よって、調査対象について興味のある人からの率直な意見を収集できるのです。
こうしたユーザーの声を真摯に受け止めることで、顧客満足度アップにつながります。遠慮のないネガティブな反応が多い場合でも、速やかに改善することでユーザーからの信頼を回復できるでしょう。
ソーシャルリスニングのデメリット
ソーシャルメディアは、若い世代を中心に非常に多くの人に利用されています。そのため大量の投稿の中から必要なデータを抽出するのは難易度が高く、コストもそれなりにかかるのです。
例えば「食」「夏」「ファッション」などの漠然としたキーワードだけだと、不必要な情報もかなり多くなることが予想されます。ですから収集したいデータによっては、相性が悪いものもあるでしょう。
また、ユーザー層の特定が難しいこともデメリットに挙げられます。特にTwitterやブログなどの匿名性の高いソーシャルメディアでは、正しいプロフィール情報を記載してないことも多いからです。実際の年齢や性別は判断しにくいですし、職業などの細かい部分まではわからないこともあるでしょう。
ソーシャルリスニングの活用方法
ソーシャルリスニングでは、マーケティングを実施する前の企画段階から市場調査をすることが可能です。
商品をPRするのであれば同じジャンルの似たようなものを調査し、その商品には何が足りないのか、どんなところをアピールすればユーザーに刺さるのかを軌道修正しながら進められます。
特に口コミやレビューサイトなどでは、辛口コメントが投稿されていたり辛辣な意見もあるでしょう。そのマイナス面をうまく改善することで、ユーザーのニーズに応えられます。
そしてマーケティングを実施した後も、PRに対しての反応や商品の評価などを調査することで成功したかの判断材料になるのです。
商品やサービスだけでなく、ソーシャルリスニングでは企業やブランド自体のエンゲージメント(ユーザーからの愛着度やつながりの強さ)も測ることが可能です。ユーザーが企業に対してどれだけ好感があり、どんなイメージをもっているかを知ることで、今後の方針やマーケティング戦略の参考になります。
ソーシャルリスニング導入の流れと注意点
ソーシャルリスニングを自社で行うには、膨大な労力やコストがかかります。そのためデータ収集や解析を請け負う企業も存在しており、提供するツールを利用するのが一般的です。ソーシャルリスニングツールを用いれば、さまざまなソーシャルメディアの膨大なデータを迅速に収集できますし、用途に応じて柔軟に分析できます。
では実際にどのような流れでソーシャルリスニングを行うのか、注意点を交えながら解説していきます。
データ収集
まずは数多くのソーシャルメディアの中から、取得したいデータに最適なプラットフォームを選択します。
ソーシャルリスニングツールにもよりますが、その他には検索したいキーワードや反映する期間などを決めてデータを抽出。収集した調査データから、さまざまな切り口で分析結果を表示します。
的確にデータを集めるには、キーワード選定が重要です。ソーシャルリスニングでは、指定したキーワードを含めた投稿が収集されるので、キーワードの選び方によっては全く違う結果が表示されます。
商品名や企業名であればそのまま入力することもありますが、日常でよく使われる言葉と被っていると検索結果も求めているものが見つからないことも。例えば、サントリーの飲料である「なっちゃん」などは、人物名として検索されることが多いでしょう。
そのため、わかりにくい単語は複合的にキーワードを組み合わせるなどの工夫が必要です。その他にも、キーワード選定における注意点がいくつかあるので見ていきましょう
単語の取得漏れに注意
上記では、同じ言葉でも違う意味の単語について解説しました。そしてひとつの言葉でも、同じ意味合いの単語がいくつも存在するケースがあります。
例えば、「りんご」という言葉には、「リンゴ」や「林檎」と表記する場合があるなどです。どれも同じ意味合いですが、人によって書き方は変わるため平仮名の「りんご」だけだと調査不足になりかねません。
そのため、一般的に書かれる可能性がある全ての単語でデータを収集する必要があります。これらの単語の取得漏れは「表記ゆれ」とも言われており、そのパターンも多種多様です。引っ越しであれば、「引越し」や「引越」と文字を短縮するケースがあったり、「匂い」や「臭い」などと意味合いの似ている漢字違いも同様の現象です。
無関係な単語を除外する
調査データの選別を行う場合、無関係な単語を除外する方法があります。特に検索するキーワードが少ないと、どうしても調査に関係のない投稿までヒットすることが多いです。
取得したデータから無駄な単語がある際には、ソーシャルリスニングツールの設定で除外することで不必要な投稿を避けられます。
これは特定のジャンルやメーカーに絞って、データを取得する場合にも有効です。例えばマイナーなメーカーの商品について調べるときは、除外する単語に大手のメーカー名を入力するとユーザーの声を絞れます。
これらの単語を除外する作業は、質の高いデータを抽出するために非常に重要な作業と言えるでしょう。
消費者の行動・購買意欲の分析とデータ活用法
ソーシャルリスニングをする上で大切なのは、マーケティングによるアプローチからユーザーがどのような行動や考えを起こすのか、購買意欲の高いユーザーはいるのかという利益につながるかの分析です。
ただ調査して「こういう結果になったのか」で終わってしまっては意味がありません。調査結果から、マーケティングのさらなるアプローチ方法や戦略の軌道修正を図る必要があります。
具体的には、ユーザー自身も気づいていない行動を起こす理由や動機を知ることです。テレビで通販番組が流れており、最初は全く興味がなかったのに視聴しているうちに商品が欲しくなった経験はありませんか?
これは通販番組が、「この商品のここをアピールすれば、ある一定のユーザー層が行動する」と想定して商品をPRしています。それがユーザーの心に響き、商品の価値を認識してもらうことではじめて行動を起こさせているのです。
ソーシャルリスニングでは、ユーザーの生の声からこうした消費者行動を導きだし新たな需要をつくり出します。
また収集した投稿データから、直接的な購買意欲を抽出することも重要です。例えば、商品を「買いたい」「買いたくない」という声に分けて、どのような傾向になっているかを調べます。そこからさらに買いたい理由や買いたくない理由ごとに仕分けして、大まかな要因を探ることが可能なのです。
買いたくない原因がわかれば、対策方法などの検討になります。そして、多数ある買いたい理由にフォーカスしてPR方法を組み立てれば、よりユーザーの購入意欲を刺激できるでしょう。
ソーシャルリスニングツール
ソーシャルリスニングツールは、データ収集の範囲から分析方法までさまざまな特徴のものがあります。企業によって重視する点は異なりますので、目的に合ったツールを選びましょう。
クチコミ@係長
クチコミ@係長は、国内最大級のソーシャルリスニングツールです。多くのソーシャルメディアから大量のデータを検索でき、高度な分析メニューを迅速に表示できます。中でも2ちゃんねるは独占提供をしているため、他では手に入らない貴重なデータを入手することも期待できるでしょう。
直感的なインターフェースで、はじめてソーシャルリスニングの導入を検討する人にも優しい仕様になっています。
操作方法やデータの分析方法、活用事例などをまとめた資料をインターネットから閲覧できます。顧客ごとに個別のオンライン・オフライン勉強会を開催しており、サポートもかなり充実しているのです。
対象メディア
TwitterやFacebookなどの代表的なソーシャルメディアから、2チャンネルや口コミ掲示板、ブログやYahoo!知恵袋などの投稿データを幅広く取得することが可能です。
ブログに関しては、FC2ブログやHatena Diary、JUGEMブログやyaplogなどがあります。
特徴
クチコミ@係長は、数多くのソーシャルメディアから約590億件以上の口コミデータを抽出し分析できます。中でもTwitterは全ツイートをカバーしており、Twitterでの宣伝や広告を打ち出す予定なら最も適しているツールでしょう。
それに加えて10個の単語を一度に入力でき、最大で13ヶ月の期間を検索できます。クロスメディア分析などの高度な機能を有しており、これらの膨大なデータ量を7秒以内に表示することが可能です。
さらに使いやすいシンプルな画面で、直感的な操作を実現。一目見ればわかる見やすい比較画面やクチコミを自動的に分類するなども備えています。クチコミ数が最も大きい盛り上がりを見せている時期に表れる関連語をさらに深掘りして、ユーザーの行動や動機について把握することも可能です。
費用
初期費用は10万円です。月額基本料金は13万円からですが、検索するプラットフォームの数で料金は変動します。
利用期間は6ヶ月からになるため、最低でも88万円ほど費用がかかるでしょう。
参考:クチコミ@係長
Social Insight(ソーシャルインサイト)
Social Insightは、主要なソーシャルメディアをほぼ網羅してデータを取得できる優れたソーシャルリスニングツールです。
分析メニューも豊富で、口コミ分析やSNS効果測定、レポート作成やSNS投稿まで利用できます。炎上を回避するためのアラート機能などもあり、充実したサービスが整っているのです。
また、全国のユーザーがいつ投稿しているかを集計できるため、タイムラインが活発な時間帯の調査にも有効です。画像や動画投稿のデータにも対応しており、さまざまなマーケティングに応用できるでしょう。
対象メディア
Twitter、Facebook、Instagram、LINE、Google+、YouTubeなどの代表的なものから、以前流行ったmixiやGREE、ニコニコ動画なども対象メディアです。その他にも、ブログなどからデータを取得できます。
特徴
日本で人気のあるソーシャルメディアはほとんど抑えており、トレンドを追いかけやすいソーシャルリスニングツールです。単語だけでなく記事のURLやドメイン、ハッシュタグなども指定できるため、多角的な視点からツイートなどを取得できます。
また、会社名や商品名がバズった(SNSでの大きな拡散)時には、自動で通知されるアラーム機能を設定でき炎上を早急に察知することが可能です。
Twitterでは、影響力の強いユーザーや特定キーワードの発言回数が多いユーザーを順にリストアップできるため、最近話題になっているインフルエンサーマーケティングにも有効活用できるでしょう。
さらには、ソーシャルメディアにおける自社アカウントの投稿やコメントの一元管理などもできます。ソーシャルメディアでの運用や管理までを一括で行える利便性の高いツールと言えるでしょう。
費用
ビジネス版とエンタープライズ版があり、ビジネス版の料金は、初期費用は5万円、月額費用も5万円からです。契約期間は6ヶ月なので、最低35万円から利用できる計算になります。
エンタープライズ版の料金は、別途相談になるので一度お問い合わせしてみてください。
buffer
bufferは、世界で300万人以上のユーザーを抱えるソーシャルメディア解析ツールです。さまざまなSNSアカウントを一括管理でき、投稿した内容に対してユーザーの反応を伺えるので効果測定として使えます。
SNSアカウントの運用がメインのため、投稿の予約機能や定期配信などの利用機能が充実しています。
またbufferは無料プランがあり、運用コストを抑えたい企業ならとりあえず導入してみることもよいでしょう。
対象メディア
Facebook、Twitter、Google+、LinkedIn、App.netなどの世界的に利用者が多いソーシャルメディアが対象です。
特徴
日本の企業が提供している訳ではなくデフォルトで英語表記です。世界的なSNSにも対応しているので海外ユーザーも視野に入れるなら導入したいツールです。
そして、これらのアカウントで投稿したデータから効果測定による分析を行い、投稿のクオリティを高められます。例えば、投稿したコンテンツがどれだけクリックされたか、コメントがどのくらいあったかなどです。
通常のソーシャルリスニングツールと違い、SNS投稿後のデータを収集しマーケティングに役立てる形になります。さらに投稿に対するユーザーの反応から、最もアクションが得られやすい曜日や時間帯を把握することも可能です。
費用
無料プランから開始できます。有料版は、月額10ドル〜です。
参考:buffer
ソーシャルリスニングはSNSマーケティングに最適
ソーシャルリスニングは自社の商品やサービスだけでなく、会社自体の価値を向上するのに役に立つマーケティング調査です。特にソーシャルメディアでのデータ収集・分析は、マーケティング戦略や効果測定、市場調査といった多くの事柄に活用できます。それだけ膨大なデータが、インターネット上に広がっているということです。
また、基本的にソーシャルリスニングツールを利用するので、単語の取得漏れや除外キーワードをしっかり設定し、できるだけ質の高い調査データを取得してください。
利用するツールによっては、機能性やプラットフォームの種類などにも特徴があります。今回ご紹介したソーシャルリスニングツールを含めて、目的や調査対象などで自社に最適なものを探してみてください。