VOC(ボイスオブカスタマー)分析方法と「お客様の声」活用法

Survey Suggestion Opinion Review Feedback Concept
Survey Suggestion Opinion Review Feedback Concept

お客様の声を意味するVOCは、収集するだけでなく、適切な分析を行なって企業活動の戦略に反映させることが大切です。ここではVOCの収集から反映までの手順と分析方法を説明します。企業活動の中で、集めたVOCがどのようなことに活用できるのかも紹介しています。効率的に収集し、最大限に活用して自社の戦略や顧客対応の質を高めていきましょう。

VOC(Voice of Customer – お客様の声)

Customer Support Operators

顧客満足度は、企業の売上や成長度に大きな影響を与えます。VOC(お客様の声)に耳を傾け、適切に分析し、企業活動の戦略に活かしていくことの重要性が高まっているようです。

VOCとは、Voice of Customerの略で、お客様の声を意味します。この「声」に含まれるものは、実際に企業に寄せられる意見、問い合わせ、クレームだけでなく、さらに広範囲のものを指します。たとえば、お客様が持っているニーズや価値観、趣向などです。

カスタマーサポートやコールセンター、マーケティング活動上で得られる、口コミやコメント、アンケート調査の回答なども含まれるでしょう。

VOCの重要性

あらゆる業界のビジネスにおいて、VOC活動は重要な位置づけとして認識されています。営業、販売、マーケティング、カスタマーサポートに至るまで、お客様の声が集まる部門はたくさんあります。

それぞれの部門の活動をどのように進めていくかということについても、VOCをもとにして決めていくことができるのです。そうしなければ、顧客を獲得することや、リピートにつながるような関係性を維持することが難しくなっているビジネス環境が広がっています。

デジタル技術の進化は、顧客の購買活動にも大きな変化をもたらしました。インターネット上で検討・購入・サポートまでが完結できてしまう時代です。企業にとって、このことはメリットとデメリットの両方をもたらします。

メリットは、インターネット上で営業や販売ができるため、市場が拡大することです。店舗の有無や拠点をどこに置いているかに関わらず、顧客や見込み顧客との接点を作り出せるようになっていることも大きなメリットでしょう。

その一方で、市場が拡大したということは、同時にライバルの数も増えたことになります。選択肢が多くなるわけですから、顧客や見込み顧客の審美眼は、一層厳しくなるでしょう。

このことを踏まえると、見込み顧客は増やすことができても、顧客化やリピート顧客化していくことの難易度は高まったといえるかもしれません。顧客やリピート顧客を獲得していくためにVOC分析と活用がどうしても必要になってくるのです。

VOCで顧客の期待との相関を見る

何のためのVOCかというと、顧客を理解するためです。何を理解しなければならないかというと、どのような期待を持っていて、商品や提供するサービスがその期待に対してどの程度の満足を与えたかです。

たとえば、良かったのか良くなかったかという単純な回答や、点数や★の数での評価は簡単に得られますし、企業と顧客がお互いに明確に把握できます。しかし「期待」というのは、そのような単純な回答だけで見出すことは難しいものです。期待は、企業に対して言葉で伝えられないことも多く、市場での行動や反応に隠れていることもあります。その部分を分析によって見抜いていくためにVOCを収集するのです。

VOCの目的

VOC活動の目的は、お客様の声を集めることではありません。集めたお客様の声を分析し、改善点や新たな課題を見つけ出し、有効な施策を実施していくためのものです。VOCに取り組むことで顧客の期待値が見えるからこそ、改善点や課題を見つけ出すことも可能になります。

VOC活動は、お客様の期待を超える商品やサービスを作り出すことや、より良いサービスを提供できる企業になることを目的とした戦略の概念なのです。

VOCの導入手順

Businesswoman teacher tutor headmaster working on laptop writing projects planning startup in office

では、VOCを行なっていく場合の、基本的な導入手順を説明します。

VOC活動の目的を明確にする

何のためにVOCを行うのかという目的を明確にします。どの部署でどのようにしてお客様の声を集めたほうがいいのかが見えてくるはずです。以降のVOC活動のステップの具体的な設計や構築もしやすくなるでしょう。

活動の内容・体制を設計

目的が明確になったところで、具体的な活用内容や社内体制を決めていきましょう。

担当部署はどこにするのか、その部署ではどのような情報をどのようなやり方で集めるのか、共有はどのような流れにするのかなどのプロセスを決めます。集めた情報の管理や分析の方法も計画に落とし込んでおきましょう。分析結果をどの部署のどのような活動に反映させるのかを決めておくことも大切です。

必要なシステムを導入する

VOCの情報収集・管理・分析には、適切なシステムを導入したほうが効率的な運用ができます。すでに社内で使っているCRMや専用システムもあるでしょう。既存のSNSなどが活用されることも多いです。

連携機能などを鑑みて、自社のVOC活動にフィットするものを選定し、効率的なシステム構築をしておきましょう。

運用・分析・施策への落とし込み

システムまで準備が整ったら、実際の運用に入ります。集まった情報から得られた分析結果を実際の活動に活かしていきます。

VOC分析方法

Colleagues discuss business strategy analysis, marketing and investment planning on tablets.

集めたVOCは分析を行いますが、さまざまな分析データの種類があります。ここで、考えられる分析データ・ツールを挙げ、その分析方法を説明します。収集方法や活用ツールを考えるときにお役立てください。

テキストデータ

VOC情報として集められるテキストデータには、カスタマーサービスで問い合わせなどを受け付けたときの双方の入力のやり取りや、担当者の入力情報などがあります。

テキストデータは、テキストマイニング機能が備わっているシステムを使うと効率的に分析することができるでしょう。単語の抽出だけでなく、不満や要望などのようなお客様の意図まで把握できるマイニングツールも増えているようです。

音声認識解析

電話でお客様からのコンタクトを受け付けているのであれば、録音によってVOC情報の記録・管理をすることができます。テキストデータに起こした状態で記録できるため、上記と同じくテキストマイニングでの分析が可能です。

コールセンターなどでは、さまざまな内容の声が寄せられるため有効なVOC収集ができるでしょう。

ソーシャルデータ

Social media

TwitterやFacebookなどのSNSからのVOCデータ収集も可能です。自社の顧客や見込み顧客だけでなく、さらに幅広い層のツイートや利用者の口コミなどの声を拾うことができます。

SNSツールなどからデータを引っ張ってくるツールを使って抽出していくことになりますが、データ量がかなり大きくなることには注意しておきましょう。

アンケートデータ

お客様にアンケートを行なってデータを集める方法もあります。匿名でも実施できるため、お客様の本音が集まりやすい収集方法のひとつです。商品購入後、サービス利用時、サービスセンター問い合わせ直後などのタイミングで実施されています。

アンケートを使う場合は、質問項目の策定から公開方法、集計や分析まで一連のプロセスを効率化できるアンケート分析ツールの活用をおすすめします。集める部署やアンケート内容に応じて適切なツールを選びましょう。

メールデータ

メールや問い合わせフォームなどもVOCデータとして有力な情報源です。メールデータとして集まったお客様の声を分類したり、分析したりする機能を備えたツールもあります。

VOC「お客様の声」活用法

Feedback

VOCとして集めたお客様の声は、お客様対応にとどまらず、業務改善や事業活動自体に活かすことができます。問題やトラブル対応のためだけでなく、改善点や課題の発見、ポジティブな情報さえ使っていくことができるのです。どのような活用法があるのかを紹介します。

顧客満足評価の公開

お客様の声をWEB上で紹介することもできるでしょう。お客様からの許可が得た上での掲載が必須ですが、名前や写真などがあると信ぴょう性が高まります。ポジティブな紹介情報は、新規顧客や見込み顧客を取り込むことに有効となるはずです。

商品やサービス・サービス体制の改善や質の向上

お客様の声には、さまざまな内容がありますが、適切に分析できれば、的を射た問題や改善点、事業成長につながる課題も把握できるようになります。商品/サービスだけでなく、サービス体制などの改善や質の向上に活かしていくことができます。

適切な改善やブラッシュアップをしていけば、顧客満足度も向上させることができるでしょう。改善したり、お客様の声を反映したりした内容を公表することで、信頼性や好感度アップにつながっているケースもあります。

新規開発に反映させる

Customer review good rating concept, customer review by five star feedback, positive feedback.

お客様の要望や意見を参考にして、新しい商品やサービスの創出に役立てることもできます。お客様からの意見を公開し、生み出した商品やサービスをWEB上で公開すれば、新たな要望や意見が寄せられる可能性を高めることができるでしょう。

実際に使用しているユーザーからの意見は貴重です。その新規開発を通じて、顧客のロイヤリティを向上させる期待も持てます。

マーケティングの最適化

VOC分析によって、お客様の期待値が測れるようになれば、マーケティング活動をより効果的にするための改善点や課題を見つけることができます。マーケティング戦略の精度を高め、効率的に顧客化につなげることができるでしょう。

社内のモチベーションアップ

VOCの中には、ポジティブなお客様の声も含まれています。社内で共有したり、表彰制度を設けたりしている企業もあります。好意的な声を従業員が認識できれば、モチベーションも高めることができるでしょう。

VOC分析と活用で企業活動の質を高める

ある商品に対する質問やクレームを対応することを目的とされていたカスタマーサービスやコールセンターなども、現在は質問もクレームも活用するために集めるというVOCの視点が不可欠になっています。

デジタル寄りの購買活動の割合が拡大している昨今、VOCはその商品だけでなく企業の事業運営にも影響を与える効力を持っているからです。実際、VOCは事業運営のさまざまな側面で活用できます。分析の精度を高めてより効果的な施策に落とし込むためにも、質の高いVOCを集めていきましょう。

ABOUT US
T.Wada
まだコンピュータが1枚の基盤だった頃からITとともに育つ。約10年のアメリカでのIT開発ディレクター・企業取締役を通じて海外も含めたITの歴史を肌で感じてきた。自身の経験から顧客対応がなぜうまくいかないのかを考える中でカスタマーサクセスを作るクラウドサービス「Re:lation」を開発。3男1女の父。好きな言葉は「日々勉強」。