現役大学生が考えたオンライン授業・リモートワークのあり方

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はじめに

今回の記事は、夏季インターンシップに参加した学生が執筆しました。

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、多くの企業在宅勤務・テレワークなど対応に迫られています。大学でも春から夏にかけて、オンライン授業が行われるようになりました。

デジタルナレッジ調査(2020年7月)(https://www.digital-knowledge.co.jp/archives/22823/ )によると、新型コロナウイルス感染拡大による大学のオンライン授業実施率は97%となっています。大学だけでなく中・高生でもオンライン会議ツールを使った授業やゼミなどの新しい形態が多くなってきました。
オンライン授業という新しい授業形態は、私たちの生活を大きく変え、そのメリットもある一方で、実際に学生がオンライン授業で感じている不満も多くあります。こちらの記事では、学生目線のオンライン授業の実態と解決策・理想の形を企業の使うオンラインサービスと合わせて紹介していきます。

大学の提示するメリットは、学生から見るとデメリット⁉︎

まず、ここでは大学においてよく挙げられるオンライン授業のメリットに対し、実際に感じている大学生(私たち)の不満を具体的に書き出してみたいと思います。

① オンライン授業だと、何度も見返すことができ理解しやすい

【学生のホンネ】
・どのタイミングで質問していいのかわからず、理解できないまま終わる。
・自分で調べながら授業に取り組むので聞き漏れなどが出てしまう。
・聞き逃したことを周りの友人等に気軽に質問できない。
・オフラインだと、学生の反応を見て先生がもう一度説明してくれたり、授業終わりに質問できる。
・教授にメールで質問しても返事が遅い、返事が来ないということもある。

② 通学時間や授業間の移動の時短になる

【学生のホンネ】
・通学時間は少なくなるが、課題の量が多く、課題をしている時間は通常授業よりも長くかかる。
・ 課題に使う時間が多くなることで、90分の授業で終わらずに、自由な時間が取れず缶詰のようになってしまう。
・講師によって課題のマイページサイトへの掲示のタイミングがバラバラで、何度もサイトを確認しなければならない。

③ 通学代・電気代等のコスト節約

【学生のホンネ】
・パソコン、プリンター、インクが各家庭にあるわけではない。
・大学側が提供するパソコン貸出台数が少なく、自分で買わなくてはいけない。
・WIFI等の通信環境が整っていない人もいる。
・環境を整えるためには、お金が必要だがバイト代だけでは厳しいのが現状。 
・コンビニでプリントアウトすると結構な額になる。

④ 自宅学習の為リラックスして取り組める

【学生のホンネ】
・授業中に、音声をオンにしていると、家族の声や生活音が入ってしまう。
・接続環境により、ラグが生まれ聞こえない箇所が出てきてしまい、聞き辛い。
・オンラインでは集中力が続かない。

⑤ 好きな時に勉強できる

学生のホンネ
・一人で進める課題が多くなり、ただ課題をやるだけの日もある。
・課題が毎日あるので、追われる日々にストレスを感じる。
・友達と話す時間、アルバイトをする時間が作れない。
・一人で孤独な作業になるので、モチベーションが低下する。
・また、家にこもりがちなので運動不足にもなる。

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オンライン授業の不満はテレワークにも通じる?

こうした私たち学生の不満は、働いている人たちがテレワークで感じているホンネの部分にも通じるのではないか、というアドバイスを受け、それではいま新しい働き方、柔軟な働き方として注目されているテレワークは、働く人達にどのように受け入れられているのか、調べてみました。

テレワークのメリットと本音

① 生産性・業務効率化の向上

【社会人のホンネ】
・コミュニケーションがとりづらく、生産性が下がる。
・自宅に仕事スペースがないとかえって作業効率が下がる。
・指導など伝わりにくく電話や対面が好ましいと感じる。
・雑談から生まれる発想や気づきの場が無くなる。
・在宅勤務とオフィス勤務の人たちの業務に差が生まれ、不平・不満が生まれてしまう。

② オフィス代や通勤費などのコスト削減 

【社会人のホンネ】
・ネット環境を整えるための初期費用がかかる。
・勤怠管理が複雑になり管理する側のコストが増える。
・社員の自宅からのセキュリティーの安全面の不安。

③ 育児・介護に携わる社員の雇用継続

社会人のホンネ
・子供の面倒見ながら仕事は、実際に厳しい。
・家族の声などが会議中に入ってしまう。

④ 地方在住や時間の制約がある多様な人材の活用

社会人のホンネ】
・地域や勤務時間の異なる社員数が多くなる為、管理が難しい。
・業務状況の把握が出来にくく、マネジメントが難しくなる。
・実際には、家での残業時間が多く、労働時間が増える。

⑤ 都市部などの優秀な人材の確保

【社会人のホンネ】
・リモートワーク中のメンバーが、情報格差に悩みやすい。
・面接などの場で、熱量が伝わりづらい。会社の雰囲気が伝えづらい。

⑥ 災害・疫病等の有事の際の事業継続性の確保

社会人のホンネ】
・テレワークできる業務とできない業務があるので、継続性の限界がある。
・全社員のテレワーク実施等のリスク対応のための投資が難しい。

学生と社会人のオンライン移行の不満・共通点

こうしてみると、学生の抱えるオンライン移行への不満と、社会人の抱える不満には共通点がみえてきました。

① オンライン環境を整えるのに、コストや時間がかかる。
② 人によって差が生まれ不平・不満が出る。
③ 非対面でのコミュニケーションが取りづらく不便。
④ 通信環境やITリテラシーの格差により、トラブルが多い。
⑤ 課題や残業など、勉強・仕事の時間が増えてしまう。

しかし、インターンをしている中で、テレワークをうまく活用している企業も多くあることを知りました。また実際にオンライン会議による説明会に参加させていただくことで、実際の活用シーンも知ることができました。

企業ではどのようにオンライン化を進めているのか?

私たちがインターンを行った株式会社インゲージでは、ウェブでのサービス説明会を実施していました。とても滑らかに説明されていて、大学の授業もこんなふうに受けたかった…と感じましたが、そのために周到にいろいろな工夫をされていることを教えてもらいました。

例えば、音声トラブル。こうしたトラブルはやはり発生する可能性がある、ということをあらかじめ考慮して、複数ツールを用意しておく、回線を別に用意するなど、常に回避策やトラブル対応を考えて、運営している様子がうかがえました。私たちが受けていた大学の授業では実際に回線のトラブルが多く、対応が不慣れであることを改めて実感しました。

「音声が聞こえなければ、チャットに書いてください」「質問はチャットで気軽に書いてください」など、何かあったときにチャット対応できるように、スタッフがチャット待機していることも印象的でした。

見て欲しい画面がある場合にも、オフラインでは指をさしながら「ここを見てください」と言えば、相手も見れます。しかし、オンラインで言っても相手はどこを見ればいいかわかりません。そのため「画面右上の〇〇を見てください」と言うとどこを見ればいいかわかります。伝え方一つとっても、オンラインとオフラインのコミュニケーションは全く異なるものだと実感しました。

また、集中力が続く時間を考慮して、1回あたりの時間も30分程度と短めでした。時間が短いので気軽に参加することもできます。

株式会社インゲージでは、もともと全国にお客さんがいるため、オンラインでの商談も多かったといいます。社内のシステムも整っており、コロナ以前からテレワークができる体制も整っていたとのことです。

だからこそ、オンラインでの対応に大変慣れており、細かな配慮までできるのだと実感しました。

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まとめ

上記の学びから、大学でのオンライン授業でも、もっと工夫や改善ができる点がたくさんあるのではないかと考えました。同時に、ITリテラシーの低さによるトラブルなどは大学でも企業でも起こる共通の課題ということが分かりました。

例えば、オンライン授業の質が問題視されている中でも、東京大学の学生は約75%学生が満足しているという結果が出ていました。(https://www.todaishimbun.org/online_class20200808/

東京大学でも、やはり新型コロナウイルス感染拡大前からすでにオンラインでの配信なども進んでおり、授業の質が高く、新型コロナウイルス収束後の講義もオンライン化の支持率が高いという実態が見えてきました。

新型コロナウイルスの影響はまだ先行きが不透明ですが、オンライン授業だけでなく、その場にいることで、相手の考えや気持ちがより伝わるような、グループワーク・実習などといった対面での授業の再開も私たち学生は望んでいます。

しかし、オンラインでのコミュニケーションの質を上げていくという意味でも部分的にオンライン授業を取り入れ、継続していくことで、システムやノウハウを確立することが必要ではないかと、今回の課題の中で感じました。
オンラインとオフライン、そのどちらの良い面を活かしつつ、質の高い学びができる環境、生産性の高まる仕事ができる環境、ともに充実させていくべきではないでしょうか。