IT化が進むと同時に増えてしまうのが社内からの問い合わせの数です。パソコンの動作やネットワークの接続、アプリケーションのインストール方法まで、その内容は多種多様ですが、対応できるのは情報システム部門のみという企業も多いのではないでしょうか? ある統計によれば、企業の情報システム部門ではその業務の1/3が社内からの問い合わせ対応だという結果も出ています。今回は社内問い合わせを効率化するための対処方法や、ツールの活用について解説します。
目次
社内からの問い合わせはなぜ増えてしまうのか?
社内からの問い合わせといっても、その中身は大きく3つに分かれます。業務に関わる各種申請や労務に関わる問い合わせは以前からあったものですが、近年は社内のIT化が進んだことによる情報システムに関する問い合わせが増えています。
- 各種申請に関わる問い合わせ
交通費や出張費、物品購入に関する精算や、申請方法に関わる問い合わせです。このような経費精算は経費精算システムを導入している企業も多く、申請方法だけでなく経費精算システムの使い方も問い合わせの対象となっています。
- 労務に関わる問い合わせ
家族の異動や厚生手続き(冠婚葬祭に関わる給付金や産休手続き)など、労務上の手続きに関する問い合わせです。このような問い合わせは、年度の始めや新入社員が入社したときなどに増える傾向があります。
- 情報システムに関わる問い合わせ
パソコンや機器の更新、OSのアップデート、セキュリティ強化、ネットワーク関連など、ネットワークが整備されたことにより増えた問い合わせです。
このような問い合わせを受ける担当部署である業務部や経理部、総務部などの情報システム部門は、問い合わせに回答することに時間を取られ、本来の業務に専念できないことが問題となっています。このような問い合わせにしっかり回答し、本来の業務も遅滞なく進めていくための対策が必要となってきます。
増える社内からの問い合わせを削減させ効率的に管理するための手段の一つとして、FAQの作成とツールの併用が効果的だといわれています。次章ではその理由について見ていきましょう。
社内の問い合わせを削減するにはFAQの作成が有効
社内からの問い合わせ業務を効率化させるには、問い合わせ件数そのものを減らすことが重要です。問い合わせ内容を集めてみて、改めて問い合わせ内容を俯瞰すると意外に同じ内容が多いことがわかります。「この資料はどこにありますか?」「申請の窓口はどこですか?」「社内ネットワークにつながらなくなった」など、おそらくは何度も聞かれている同じ内容が多いはずです。このような場合にはFAQ(Frequently Asked Questions=よくある質問)を作成しておくことで、社内の問い合わせ件数を削減できます。
FAQを作っておけば、社内からの問い合わせがあったときでも「ここに置いてあるFAQを見てください」、もしくは「FAQを見てそれでも解決しなければ改めて連絡をください」という対応が可能です。問い合わせが来てから問い合わせに対する回答を調べ、口頭で相手に伝えるよりは余程効率的に対応できるでしょう。
FAQの作成に特別なツールは必要ありません。極端にいえば、表計算ソフトやワープロソフトを使って問答集を作る感覚で作成できます。できあがったファイルを社内の人が見やすい場所(ネットワーク上ポータルサイトやフォルダ)に置けば、すぐに運用を開始できるのがFAQの良いところです。FAQは作り方も簡単ですので紹介します。
社内問い合わせFAQ作成の手順
- 今までにあった質問を収集する
- カテゴリー(部署と内容)ごとに分類
- 多い質問が上位に来るように優先順位をつける
- カテゴリーごとに模範的な回答を関係部署に作成してもらう
- 社内のポータルサイト、もしくは特定のフォルダに掲示し、わかりやすい場所にリンクを設けFAQの設置を社内に通達する
このようなFAQを作成し活用するだけで、社内からの問い合わせ件数を相当数削減することができるでしょう。
社内問い合わせ対応の効率化にはツールを活用
上記のようにFAQを活用することで問い合わせの件数そのものを減らすことはできますが、問い合わせに対応する時間が完全になくなるわけではありません。社内から寄せられる問い合わせに応対する時間を効率化するために、チャットボットを導入する企業も増えています。FAQで対処しきれない問い合わせの対応には、ツールの活用が効果的なのです。
チャットボットとは
チャットボットは、リアルタイムに会話する「チャット(chat)」と、ロボットを意味する「ボット(bot)」を組み合わせた言葉で、テキスト文もしくは音声で送られてくる問い合わせに、自動で回答するプログラムのことを指します。
チャットボットはコンピュータ上で稼働するプログラムですので、24時間365日、自動対応できます。たとえば退勤時間を過ぎたあとに他の部署から問い合わせがあったとしても、チャットボットであれば質問者に応対し回答を示してくれます。質問と回答はすべてログとして残されているので、翌朝ログを確認し、その回答が質問に適した回答であったのかどうかも、あとから確認できます。
チャットボットには人工知能(AI)型と人工無能(AI非搭載)型のシステムがあり、それぞれコストが変わりますが利用には一定の料金がかかります。人工無能型は、人工知能型と比較して質問の意図と回答がずれることがあるので、問い合わせ対応にかかるコストと比較してどちらを導入するかを決めていくべきでしょう。
またシステムの導入以外に、準備に時間がかかることも知っておきましょう。チャットボットであっても、結局は多く問い合わせのある質問と、それに対する回答はあらかじめ用意しなければならないので、FAQとの差別化が難しいと思われることがあるかもしれません。
チャットボットは比較的利用コストの高い応答システムですので、社内の問い合わせ対応にコストがかけられないという事情もあるでしょう。そのような場合には問い合わせ管理システムの導入がおすすめです。
コストパフォーマンスに優れた問い合わせ管理システム
問い合わせ管理システムはメールやチャット、電話(内線)にも対応しており、社内からの問い合わせ対応を一元化できます。問い合わせ管理システムの特徴の一つは、問い合わせの対応中や未対応、対応の遅れなどが一目でわかることです。このシステムを先述のFAQと併用すれば、社内の人的リソースを活用しながら問い合わせの効率化が可能です。
クラウド型の問い合わせ管理システムを導入すれば、テレワークでの対応も可能になり働き方改革にも寄与することでしょう。またクラウドシステムは機能を必要に応じて選べるためよりコストを抑えることも可能です。問い合わせ管理システムは、非常にコストパフォーマンスに優れたシステムなのです。
社内問い合わせ対応の効率化にはFAQと問い合わせ管理システムの併用が最適
社内からの問い合わせに対応することも大切な業務ですが、たとえば情報システム部が問い合わせ対応に追われ、業務システムの更新が遅れるのであれば本末転倒になってしまいます。まずは社内問い合わせを削減する工夫(FAQの活用)と、回答を効率化する工夫(ツールの導入)を行いましょう。ただし社内の問い合わせ対応に高いコストはかけられません。特にツールの導入時にはコストを抑える工夫が必要です。大切なのはコストと効果のバランスでしょう。