エスカレーション対応の意味や課題、効果的な対応フローの作成方法を解説

業務上の困りごとの相談や上長へ指示を仰ぐための「エスカレーション対応」は、業界業種を問わず欠かせないビジネスプロセスです。エスカレーション対応という言葉に聞き覚えはなくても、現場担当者では対応しきれない業務を上位者に引き継いだり、対応を委ねたりと日常的に実施している企業は多いでしょう。この記事では、エスカレーション対応の基本的な意味や課題、効果的な対応フローの作り方を解説します。

エスカレーション対応とは、現場では対応しきれない問題や課題が発生した際に、上位者に対応を引き継いでもらうことを意味します。段階的拡大、上申といった意味を持つ英語の「escalation」が語源で、トラブルが発生した際、ボトムアップ的に上司やリーダーなど、より的確な相手へ判断や指示を仰ぐことを指します。

具体的には、高度な専門知識や権限が必要、解決に時間がかかりそう、対応が遅れることで後々問題が深刻化する可能性があるといったシーンで用いられます。いずれのシーンでも早い段階で上位者の耳に入れておく必要があるため、エスカレーション対応は重要です。

エスカレーション対応は、さまざまな業界や業種で利用されるビジネスプロセスですが、コールセンターのようなオペレーション業務を中心とした現場で使われることが多いです。コールセンターの場合は一次対応中のオペレーターが対応しきれない場合に二次対応として、リーダーやSV(スーパーバイザー)に対応の引き継ぎを依頼するといったシーンが該当します。

エスカレーション対応の3つの課題とは?

エスカレーション対応は発生したトラブルを迅速に解決するためには有効なビジネスプロセスですが、うまく機能せず逆に足かせになることもあります。エスカレーション対応を的確に実施できなければ、業務効率の悪化や顧客満足度の低下につながるおそれがあります。ここではエスカレーション対応で起こりやすい課題のうち代表的なものを3つ解説します。

エスカレーションすべきか否かの判断基準がない

現場担当者が上位者に報告すべき内容なのかをすぐに判断できないケースです。特に経験の浅い担当者は「迷惑をかけたくない」「エスカレーションするかどうか迷う」などの理由から一人で対応を続けてしまい、解決に時間がかかる、誤った対応をしてしまうなどの可能性があります。反対に、些細な内容を都度エスカレーションしていては、上位者の業務がパンクしてしまい、上位者の本来対応すべき管理業務や改善業務が後回しになるおそれもあります。

適切なエスカレーション対応を実施するには、現場担当者の個々の基準に判断を委ねるのではなく、客観的で明確な判断基準を設定することが重要です。また、エスカレーションしやすい社内環境や雰囲気を意識的に構築するのも大切な取り組みでしょう。

エスカレーション先がわからない

エスカレーションの対応フローが確立していない組織でよく見られる課題で、対応遅れの原因となりかねません。

この場合はエスカレーション先を定めるとともに、運営ルールとして関係者に共有しておくことが重要です。また、フローやルールから外れた問題が発生した場合に備えて、「誰に相談すべきか迷うなら、まずは○○さんに相談する」と定義しておきましょう。定期的にフローや運営ルールを見直し、最新化することでより万全な対策になるでしょう。

エスカレーション後の対応進捗がわからない

エスカレーションをしたものの、上位者で対応が完了しているのかどうか、結果はどうだったのかわからないケースです。上位者が忙しい場合には「対応自体を忘れていた」「対応する余裕がなかった」など対応自体が進んでいないおそれもあります。また、エスカレーション後の対応が疎かになってしまうと、お客様の不信感やクレームにつながる可能性も考えられます。

そのため、エスカレーションをして終わりではなく、後続する対応が正しく完了しているかどうかも管理することが重要です。この時、現場担当者は忙しい上位者に声をかけづらく、萎縮してしまったり、後回しにしてしまったりするおそれがあります。エスカレーション後の対応状況を確認するための方法、対応が滞っている場合はどうするかなどはルール化し、現場担当者、上位者全員で共有することが重要です。

スムーズなエスカレーション対応フローの作り方

前述した課題点を踏まえ、エスカレーションを円滑に運営するための対応フローを作成しましょう。ここからは対応フロー作成で押さえておきたいポイントを3つ解説します。なお、対応フローや運営ルールは現場担当者や上位者など関連する部署の全員がいつでも参照できる場所に保管することが重要です。また、作成したあとも定期的に見直しを実施し、運用しづらいところを改善したり、内容を最新化したりといった更新作業を継続するようにしましょう。

エスカレーション対象を明確にする

エスカレーションすべきかどうかの判断基準を設けるために、まずは対象を明確にします。たとえば、以下のようなケースで、「いつ」「誰から」「どのような内容」といった問い合わせの内容を洗い出しましょう。

  • クレーム対応で責任者からの回答を求められているケース
  • 特定の専門知識やスキルが必要なケース
  • 金額交渉や調整が必要なケース
  • 特定の権限や承認が必要なケース

エスカレーション対応すべき対象を明確にしたあとは、ここまでを現場で対応する、ここからはすぐに上位者に相談するなど、判断基準やルールを明確にしておくことで、エスカレーション時の混乱を避けられます。

エスカレーション方法やルートを整理する

誰にどうやってエスカレーションするのかを明確化します。具体的には以下のようなエスカレーション方法やルートを定めましょう。

  • エスカレーション先は〇〇、不在や取込み中の場合は××に連絡
  • 問題発生後は〇〇分以内に連絡
  • 原則メールでの連絡とし緊急時のみ電話で連絡

なお、内容によって依頼先が異なる場合もあります。商品やサービスの仕様や操作方法に関する問い合わせは〇〇、料金に関する問い合わせは××など、エスカレーション内容に応じた適切な依頼先を明らかにすることが重要です。この時、特定の部署や担当者に二次対応が集中しそうな場合は、依頼先を細かく分類したり、複数設定したりといった工夫も有効です。

また、エスカレーション時の情報共有が不十分だと、誤解や遅延を招く可能性もあります。エスカレーションしたい内容、お客様の情報、これまでの対応経緯など、情報共有が必要な項目があれば、あらかじめテンプレート化しておくとよいでしょう。

エスカレーション後の流れを明確にする

エスカレーションを実施したあと、上位者での対応状況を確認するための仕組みづくりも重要です。専用システムやツール上で対応状況を一元管理できるようにする、進捗遅れが発生した場合の対応方法を定めるなど、解決までの一連のプロセスを明確にします。

また、エスカレーション対応をスムーズかつ効率的にするためには、エスカレーションの回数自体を削減する取り組みも重要です。エスカレーション後に上位者がどう解決したのかを現場担当者へ社内ナレッジとして共有することで、同様の問題が発生した場合でも現場担当者の自己解決率が向上します。

さらに、現場担当者が解決可能なケースを増やせるのでエスカレーション件数が低下し、結果的に上位者の負荷軽減や部署全体での業務効率化につなげることが可能です。確実に社内ナレッジへ反映できるように、エスカレーション後の対応フローとしてプロセス化するのがよいでしょう。

エスカレーション対応の効率化には問い合わせ管理システムの導入がおすすめ

エスカレーション対応を滞りなく実施し、対応状況を一元管理したいのならば、問い合わせ管理システムの導入を検討してみましょう。問い合わせ管理システムではエスカレーションを一覧化でき「誰が、いつ、どのエスカレーションを、どこまで進めたのか」が一目でわかるため、対応漏れや二重対応の防止につながります。

問い合わせ管理システムは近年多くの製品が登場しており、機能や使い勝手はさまざまです。たとえば、株式会社インゲージの「Re:lation(リレーション)」では、チーム内で案件内容、進捗状況を共有するだけでなく、ラベル機能で案件を仕分けたり、タイムラインで過去のやり取りを確認できたりと、業務の効率化や品質向上につながる機能が充実しています。また、グッドデザイン賞受賞の使いやすい操作性でITに苦手意識を持つ社員でも直感的に操作でき、問い合わせ管理の業務効率は飛躍的に向上します。

問い合わせ管理システムの導入を検討する際は、機能や操作性をあらかじめ確認するとともに、導入実績を確認するなど、自社のニーズにマッチする製品を選ぶのがポイントです。

最適なエスカレーション対応にはフローの作成や管理システムの導入が効果的

エスカレーション対応はトラブルを早期に解決するために重要なビジネスプロセスです。適切な対応が実施できれば、業務効率化や応対品質向上、さらに顧客満足度向上につながります。この記事で紹介したエスカレーション対応時の課題やフローの作り方を参考に、スムーズなエスカレーション対応ができるように取り組みましょう。