企業のWebサイトを訪れた際、画面の隅に「何かお困りですか?」とポップアップが設置され、チャットでやり取りできる仕様を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
Webチャットは、訪問者が企業とリアルタイムでやり取りできるツールで、顧客対応や販売促進の場面で活用されています。
本記事では、外部の顧客対応が主な用途の「顧客対応に特化したCS(カスタマーサクセス)向けのチャット」について、Webチャットの機能や導入の注意点、ツール選びのポイントをご紹介します。
目次
Webチャットとは?カスタマーサクセス向けとビジネス向けの違い
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Webチャットには主に 「CS(カスタマーサクセス)向け」 と 「ビジネス(営業・マーケティング)向け」 の2種類があり、それぞれ目的や機能が異なります。また、Slack、Microsoft Teams、Chatworkのような「社内コミュニケーションツール」とは別物です。
カスタマーサクセス向けWebチャットの特徴
顧客対応・サポートの効率化
カスタマーサクセス向けWebチャットは、問い合わせ対応のスピードと効率を向上できます。従来のメールや電話対応では、顧客が問い合わせをしてから回答を得るまでに時間がかかることが多く、対応する側の負担も大きくなりがちでした。しかし、Webチャットを導入することで、リアルタイムでの応答が可能になり、顧客の待ち時間を大幅に削減することができます。
また、チャットの履歴を保存・共有できる機能を備えたツールを使えば、過去の問い合わせ内容をチーム内で簡単に参照でき、対応の一貫性を保つことができます。これにより、カスタマーサポートチーム全体の業務負担を軽減しながら、顧客満足度を向上させることができます。
顧客満足度の向上
カスタマーサクセスの重要な指標である顧客満足度や顧客が商品やサービスを他人に推奨したいと思う度合いであるNPS(ネット・プロモーター・スコア)の向上にも、Webチャットは大きく貢献します。顧客が疑問を感じた際に、すぐにサポートを受けられる環境が整っていれば、不満を感じることなくスムーズに課題を解決できるため、顧客満足度の向上につながります。
特に、SaaSなどのサブスクリプション型ビジネスでは、解約(チャーン)を防ぐために、顧客が離脱する前に適切なサポートを提供することが重要です。Webチャットを活用すれば、顧客が「困った」と感じたタイミングで即座に対応できるため、サービスに対する信頼感を高めることができます。また、チャット終了後に顧客満足度アンケートを自動送信し、顧客のフィードバックをリアルタイムで収集・分析することで、サービスの改善にも役立ちます。
チャットボットによる自動化
WebチャットにはAIチャットボットを活用して、問い合わせ対応を自動化する機能を備えているものもあります。これにより、サポート担当者の負担を軽減しながら、24時間対応を可能にすることができます。たとえば、よくある質問(FAQ)を学習させたボットを導入すれば、簡単な問い合わせには自動で対応し、より高度な質問やクレーム対応などは有人オペレーターにエスカレーションするといったかたちで、対応の効率化を図れます。
また、顧客データと連携することで、個別のカスタマイズ対応も可能です。例えば、「過去の問い合わせ履歴」や「契約プラン」などの情報をもとに、適切な回答を提示することで、より精度の高いサポートを提供できます。このように、WebチャットにAIを組み合わせることで、カスタマーサクセスの業務を効率化しつつ、よりパーソナライズされたサポートを実現できます。
ビジネス(営業・マーケティング)向けWebチャットの特徴
コンバージョン率向上
Webチャットは、営業やマーケティングの領域でも効果を発揮します。特に、ECサイトやBtoBのサービスサイトでは、訪問者の離脱を防ぎ、コンバージョン率(CVR)を向上させる手段としてWebチャットを活用できます。
たとえば、サイト訪問者が特定のページを一定時間閲覧している場合に、自動でチャットをポップアップさせることで、購入や問い合わせを促すことが可能です。
また、Webチャットには、商品やサービスの選び方をサポートする機能を持つものもあります。たとえば、顧客が「どのプランを選べばいいかわからない」と迷っている場合、リアルタイムで適切な情報を提供し、スムーズな意思決定をサポートできます。これにより、購入や申し込みへのハードルを下げ、コンバージョン率を向上させることができます。
見込み顧客(リード)獲得
Webチャットは、リード獲得(Lead Generation)にも活用可能です。通常、リード獲得にはフォーム入力や資料請求が必要ですが、多くの訪問者は入力の手間を感じて離脱してしまいます。しかし、Webチャットを活用すれば、会話のやりとりのなかで自然にリード情報を収集しながら、結果的にコンバージョン率を高めることができます。
たとえば、「〇〇についてお困りですか?」といったポップアップメッセージを表示し、顧客が質問すると、その流れで「よろしければ詳細な資料をお送りしましょうか?」と案内することで、メールアドレスなどの情報を取得できます。
また、チャットのやり取りのなかで、見込み度の高いリードをスコアリングし、ホットリードを営業チームに即時共有する機能を持つツールもあります。このように、Webチャットは訪問者とのコミュニケーションをスムーズにしながら、効率的にリードを獲得できます。
Web接客・シナリオ設計
営業・マーケティング向けのWebチャットでは、顧客の行動に応じたシナリオ設計が可能です。
- サイト訪問直後 → 「何かお探しですか?」と軽い誘導
- 商品ページを一定時間閲覧 → 「この商品について詳しく知りたいですか?」と案内
- カートに商品を入れた後に放置 → 「購入前に不安なことはありますか?」とリマインド
といったかたちで、顧客の状況に応じた最適なメッセージを自動配信できます。これにより、顧客の関心を引き、購買や問い合わせへとつなげることができます。
また、マーケティングオートメーション(MA)と連携することで、チャットで取得した情報をもとに、その後のフォローアップを自動化することも可能です。たとえば、「資料請求をした顧客には1週間後にフォローアップメールを送る」などのシナリオを組むことで、より精度の高いリードナーチャリングが実現できます。
このように、Webチャットは単なる問い合わせ対応ツールではなく、営業・マーケティング戦略の一環として活用することで、CVRの向上やリード獲得に役立てることができます。
カスタマーサクセス向けWebチャットの主な機能
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カスタマーサクセス向けWebチャットは、顧客対応の効率化や満足度向上を実現するための多機能を提供します。こちらでは、下記4点をご紹介します。
- FAQ・ナレッジベース連携
- AIチャットボットによる自動応答
- 有人チャットとのシームレスな切り替え
- CRM・ヘルプデスクとの連携
FAQ・ナレッジベース連携
Webチャットには、FAQやナレッジベースと連携できる機能が搭載されているものもあり、顧客が自分で問題を解決できる環境を提供できます。これにより、サポートチームの対応負担を軽減しながら、顧客の疑問をスピーディーに解決できるのが大きなメリットです。
特に、よくある質問(FAQ)を自動で検索し、適切な回答をチャット上に表示する機能があれば、顧客はオペレーターとやり取りすることなく、短時間で問題を解決できます。
また、企業のノウハウを管理・共有できるデータベースのことである、ナレッジベースの充実度を高めることで、対応の属人化を防ぎ、どの担当者でも一貫した回答を提供できるようになります。FAQを活用した自己解決が進めば、有人対応が必要な問い合わせを減らし、より複雑な相談にリソースを集中させることも可能です。
AIチャットボットによる自動応答
AIチャットボットを活用することで、問い合わせ対応の一部を自動化し、24時間対応を実現できます。これにより、営業時間外の顧客からの質問にも対応できるため、サポートの手が届かなかった時間帯の顧客満足度を向上させることが可能です。
特に、機械学習や自然言語処理(NLP)を活用したボットであれば、顧客の質問の意図を理解し、適切な回答を提示できます。例えば、
- 「ログインできません」 → パスワードリセットの手順を案内
- 「請求書が見つかりません」 → 請求書の確認方法を提示
といった対応が可能になります。簡単な問い合わせはボットに任せ、複雑な対応は有人チャットに引き継ぐことで、サポート体制全体の効率化につながります。
有人チャットとのシームレスな切り替え
AIチャットボットだけでは対応できないケースでは、オペレーターによる有人対応へスムーズに切り替えられる機能が求められます。特に、技術的な質問やクレーム対応など、人の判断が必要な場面では、迅速に担当者に引き継ぐことが重要です。
例えば、顧客が「オペレーターに相談したい」と入力した際に、リアルタイムでサポート担当者にエスカレーションできる機能があれば、顧客のストレスを最小限に抑えられます。また、オペレーターが過去のチャット履歴を確認できる仕組みがあると、顧客は何度も同じ説明をする手間が省け、スムーズな対応が可能です。
このように、ボットと有人対応を適切に切り替えることで、サポートの質を維持しながら業務効率を向上させることができます。
CRM・ヘルプデスクとの連携
WebチャットをCRM(顧客管理システム)やヘルプデスクツールと連携することで、顧客情報を一元管理し、より高度なカスタマーサポートを実現することもできます。例えば、過去の問い合わせ履歴や契約プラン、利用状況を自動で表示できるようにすれば、担当者は顧客の状況を把握した上で適切な対応が可能になります。
また、問い合わせ内容をCRMに自動で記録することで、後続のフォローアップ対応やデータ分析にも活用できます。たとえば、
- 「過去に○○の問い合わせをしていた顧客に関連情報を提供」
- 「解約リスクの高い顧客に事前にアプローチ」
といった施策も可能になります。顧客対応の質を向上させるだけでなく、サポートチーム全体の業務を効率化するうえでも、CRMやヘルプデスクとの連携は欠かせない機能です。
カスタマーサクセス向けWebチャットの活用事例
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カスタマーサクセス向けのWebチャットは、業種やサービスによって活用方法が異なります。具体的な導入事例を2つ紹介します。
【事例①】ECサイトでの問い合わせ対応を効率化
ECサイトでは、商品に関する質問や注文ステータスの確認などが日常的に発生します。例えば、顧客が「○○商品のサイズを教えてください」と問い合わせた際に、チャットボットが自動で商品情報を返すことで、サポート担当者の負担を軽減できます。
また、FAQと連携し、一般的な質問を自動化することで、顧客が簡単に自己解決でき、より迅速な対応が可能になります。結果として、サポート体制が効率化され、顧客の満足度向上に貢献します。
【事例②】SaaS企業のカスタマーサポート改善
SaaS企業では、新規顧客がサービスに適応できるように、オンボーディングのサポートが重要です。カスタマーサクセス向けWebチャットは、オンボーディングプロセスの一環として活用すれば、顧客の疑問にリアルタイムで対応できるようになります。たとえば、システムの初期設定や利用方法に関する質問に対して、自動応答で最適な手順を案内したり、パーソナライズされたサポートを提供したりすることができます。
これにより、顧客はスムーズにサービスを使い始めることができ、離脱率の低下や顧客満足度の向上が期待できます。また、カスタマーサクセスチームは顧客の進捗状況を把握でき、必要に応じてフォローアップを行うことができます。
カスタマーサクセス向けWebチャット導入時の注意点
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カスタマーサクセス向けWebチャット導入時には、目的に合ったツール選びや、有人対応と自動化のバランスが重要です。効率的かつ質の高いサポートが実現するため、各注意点について詳しくご説明します。
目的に合ったツールを選ぶ
カスタマーサクセス向けのWebチャットツールは、サポート特化型やマーケティング支援型など、目的に応じた選定が必要です。例えば、サポート特化型では、問い合わせ対応の効率化や顧客満足度向上に焦点を当て、マーケティング支援型ではコンバージョン率の向上を目指します。それぞれに対応したプランを選びましょう。
人員体制・業務フローの見直しと適切な対応手段の選択
Webチャット導入時は、有人対応と自動化のバランスが重要です。チャットボットで定型的な問い合わせを自動対応し、サポート担当者の負担を軽減できますが、複雑な質問や感情的な内容が含む問い合わせへの対応には有人対応が必要です。スムーズな引き継ぎ体制を整えることで、顧客満足度を向上できます。
また、Webチャットは短いやり取りには適していますが、クレーム対応や複雑な問題には向かない場合があります。文字だけでは誤解を招くリスクがあるため、必要に応じて電話やビデオ通話などの手段を用意し、柔軟な対応を心がけましょう。
チャットボットの学習データの継続的な改善
カスタマーサクセス向けWebチャットでは、チャットボットの学習データを継続的に改善することが不可欠です。初期段階ではよくある質問や一般的な問題への回答を学習させますが、顧客との実際のやり取りを通じて、想定外の質問やトラブルが発生することがあります。
こうした新しい質問や情報をチャットボットの学習データに追加することで、回答精度を高め、自動対応できる範囲が広がるようになります。さらに、定期的に学習データを分析してパフォーマンスを向上させるためのメンテナンスも必要です。
このようにWebチャット導入後も、改善を続けることでさらに顧客満足度を高められます。
ツールとの連携も見越して導入する
カスタマーサクセス向けのWebチャットツールを選定する際には、他のツールとの連携を想定しておくことも重要です。例えば、CRM(顧客管理システム)やヘルプデスクツール、マーケティングオートメーションツールと連携させることで、顧客情報の一元管理が可能となります。
これにより、過去のやり取りや顧客の購買履歴などを迅速に参照しながら、顧客への対応ができます。顧客データを統合すると、問い合わせ対応時によりパーソナライズされたサービスが提供できるため、顧客満足度の向上も期待できます。また、連携機能を活用することで業務の効率化や情報共有もスムーズになり、組織全体のパフォーマンスが向上します。
カスタマーサクセス向けWebチャットツールおすすめ5選
Webチャットツールは、顧客対応を効率化し、リアルタイムでのサポートを可能にする重要なツールです。用途に応じてシナリオチャット、AIを活用したチャットボットなど、最適なツールを選ぶことが大切です。代表的なWebチャットツールを紹介し、それぞれの特徴を解説します。
Re:Chat
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Re:Chatは株式会社インゲージが提供するWebチャットツールで、問い合わせ管理システム「Re:lation」とのシームレスな連携が特徴です。一部制限はあるものの、無料版でもRe:lationの管理機能を使用できます。また、料金体系もシンプルで300通まで無料で利用できます。
ChatPlus
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ChatPlusとはチャットプラス株式会社が提供するWebチャットツールです。チャットボット対応と有人対応が併用できるWebチャットツールです。AI会話機能を搭載し、自由な入力にも柔軟に対応可能です。
HiTTO
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HiTTOは株式会社マネーフォワードが提供するAIチャットボットツールです。社内のナレッジを体系化することで、業務効率化に貢献し、新しいコミュニケーションを創り出すチャットボットです。
Zendesk Chat
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Zendesk Chatは、株式会社Zendeskが提供する顧客サポートツールです。リアルタイムチャットやチャットボット、カスタマイズ可能なウィジェット、チャット履歴、アナリティクス機能を搭載しています。
sAI Chat
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sAI Chat(サイチャット)は株式会社サイシードが提供するAIチャットボットです。高性能な人工知能と手厚い運用サポートを適宜切り替えて使い分けできます。
Webチャットの導入なら問い合わせ管理ツール「Re:lation」と連携できる「Re:Chat」がおすすめ!
Webチャットを導入するなら、問い合わせ管理ツール「Re:lation」と連携できる「Re:Chat」がおすすめです。
「Re:Chat」はシンプルな操作性と使いやすさが特徴で、問い合わせ対応の可視化や情報共有機能を活用し、チーム内の連携を強化できます。「Re:lation」との連携により、顧客情報を一元管理できるため、サポートの質が格段に向上します。
「Re:lation」は、メールやチャットなど複数の問い合わせ窓口を一元管理することができます。Webチャット「Re:Chat」と「Re:lation」を連携させることで、チャット対応の抜け漏れを防ぎ、問い合わせ管理の精度を大幅に向上させることも可能です。
カスタマーサポートをより効率化するために、「Re:Chat」とともに「Re:lation」の導入もぜひ検討ください。
まとめ
Webチャットツールは、顧客対応の効率化やサポート品質の向上に欠かせない存在です。それぞれのツールには異なる特徴があるため、自社の目的に合わせた選択が重要です。
この記事を参考に、自社に最適なWebチャットツールを導入し、カスタマーサクセスの強化を図りましょう。