カスタマーハラスメントとは?悪質クレームの定義とその対処法

Businessman touching a young woman over his thighs at work. View of sexual harassment in the office
Businessman touching a young woman over his thighs at work. View of sexual harassment in the office

カスタマーサポートの業務に携わる方は日々、お客様からの様々なお問い合わせに真摯に向き合っています。多くのお問い合わせにおいては、お客様のお悩みや疑問にお答え、お客様の抱えている問題を解決することが日々の目標となっていると思います。

一方で、こちらの不手際やシステムのトラブル、あるいは商品の不備などの問題があったときに、お客様からクレームをいただくこともあります。

そうしたクレームも、本来は真摯に受けとめるべきものであり、原因を追究し今後ミスが起こらないように次善の策を考えて対応する、といったことが求められますが、近年は、過度なクレームや謝罪の要求が問題になるケースも見られます。

最近では、厚生労働省の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」などにおいて、パワーハラスメントの一種として、お客様からのハラスメントも問題として取り上げるべきではないか、と議論がなされています。こうしたお客様からのハラスメントを「カスタマーハラスメント」(カスハラ)と呼びます。

では、こうしたクレームに対し、どのように対応すればよいでしょうか。

悪質クレームとは

スーパーなど流通大手の従業員で構成されている労働組合UAゼンセンでは、以前からこの悪質クレームへの対応に取り組んでいます。

悪質クレームの定義とその対応に関するガイドライン (PDF)

(ア)社長をだせ、責任者を呼べ、上の者をだせのリピート
(イ)対応の悪さを執拗に指摘
(ウ)不快感を晴らすために叶いそうにない要求をあえてストレートに主張
(エ)文章をよこせ、一筆入れろとの請求
(オ)長時間の監禁
(カ)普通の顧客なら受け入れる対応を拒絶しつづける
(キ)店頭・事務所に居座り、大声で非難し、帰らない

ガイドラインでは、以上のような行為があれば、悪質であると判断できるとしています。しかし、一概に定義できるものではなく、その判断は明確なものがありません。

悪質クレームによる被害・損失

日々お客様と接する接客業・サポート業務に携わる方々は、皆さまざまな背景を持った人たちに丁寧な言葉で気持ちよく接する、なるべくお待たせしないようにてきぱきと対応する、なっどといったことが求められています。しかし、度を越えた理不尽な要求や怒声をともなったクレームを受けることは、非常にストレスです。直接的な攻撃がないまでも、精神的なダメージは非常に大きいものになります。

また、企業としても、一定時間ひとりのお客様の対応に長時間費やすことはサービスの低下を招き、周囲に他のお客さまがいる場合には、非常に迷惑がかかり悪影響です。

一人ひとりのお客様と向き合うことはもちろん大切ですが、お客様は神様ではありません。行き過ぎた顧客至上主義ではなく、労働者の適切な職場環境を守ることで、企業価値が維持されることもあります。悪質なクレームに対して毅然とした態度をとる、そうした責任もまた企業に求められています。

悪質クレーム・カスハラの対策

(1)悪質クレームの定義と指針を明確に
現場レベルでクレーム対応の判断ができるように悪質クレームの定義を明確にします。また企業の考え方・対応のあり方を、まず示すことで、指針を明確にします。

(2)クレームを類型化し、対応内容を定める
全体の指針を決めたのちに、想定されるクレームとその判断基準・対応手順・対応内容を定めます。完全にマニュアル化するのではなく、ある程度適正な判断ができるよう整理し、場合によっては柔軟に対応できるようにします。

(3)毅然とした態度を示す
『社会通念上受け入れられないことは、きちんと断る』という毅然とした態度を示します。複雑化・長期化する傾向のあるものあ上位職のものが対応し、専門性の高いものであれば、専門家の判断を伺うことも含め、迅速に判断します。そして、より悪質性の高いクレームは、警察・弁護士などに依頼するといった判断も必要になります。

カスタマーハラスメント対策の認知度を高める

カスタマーハラスメントという言葉は、最近になった作られた造語であり、まだまだ一般に浸透しているものとはいえません。

しかし、他のパワーハラスメントと同様に、言葉を広めていくことで労働者や職場の意識を変えていくこと、さらには認知度を高めることで問題を顕在化させることが重要になります。

お客様が不満を感じ、また嫌な思いをした、というそのことについては、きちんとその不満に向き合って誠実に対応しなければなりません。しかし、それでも無理な要求を続けられた場合には、しかるべき毅然とした対応をとる、ということが当たり前になる社会を目指していく必要があるのではないでしょうか。