社員で撮影!動画広告を内製化するYouTubeCM制作の秘訣

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これまで知らないこと・調べたいことはGoogleで検索する(=「ググる」)のが一般的でした。でもそれはもう昔の話となりつつあります。

「ググる」から「ツベる」に

今やGoogleではなく、まず初めにYouTubeを開いて、そこで知りたいことを検索する動きが広がっています。実際、マーケティング1年生の筆者もよくYouTubeで「SEO 基礎知識」などのキーワードで検索してヒットした動画から学習しています。このように「YouTubeでの検索(=「ツベる(YouTubeのローマ字読みである「ヨウツベ」から来ています)」が当たり前になってきています。

そんななか、私たちインゲージも自社サービス『Re:lation』のYouTube CMを制作しました。その汗と涙の結晶がこの動画です。

メール・LINE・SNSを一元管理『Re:lation』

なんとなくお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、このCMの出演は全て社員です。最初の案出し、絵コンテ、撮影、編集などすべての工程を自社内で仕上げました。もちろん、社員は動画のスペシャリストではありませんしそれぞれが通常業務を抱えながらのチャレンジでした。ですが最終的には無事にCMを完成させることができました!

今回はCMを完成させるまでの道のりと成功の秘訣を皆さんに共有するべく、プロジェクトを牽引した社長にインタビューして来ました。動画マーケティングをやってみたいけど、何からすればいいかわからない!という会社様には必見の内容です。

なぜ自分たちで動画をつくるのか

インゲージ代表取締役 和田哲也

――自社内でCMを作ろうと思った理由を教えて下さい。

和田:もともと私はゲーム会社でビデオゲームの開発を行っていました。ゲーム内のコンテンツとして短編のドラマを何本も企画・開発してきました。絵コンテを作って、ストーリーや登場人物の動きなどを形にして制作していくのです。よく言えば映画監督みたいな感じですね。また、趣味で自分の子供を撮影・編集もしていました。私にとって動画を作ることや編集することはとても身近で、動画制作を外部に委託しようという考えはなかったですね。それに、サービスを提供している自分たち自身が伝えたいことを、生の声で動画にしたいという想いから「自分たちで創る」と考えました。

―― 確かに、外部の会社やタレントさんにお願いする場合「そもそもうちのサービスってどんなものか」といった説明から始めないといけないですよね。専門の会社さんにお願いした方が見栄えのいいものはできるかもしれないけど、生の声という側面で見ると自社で製作するメリットは高いですね。

動画CMを創るには

―― まずはじめにやらないといけないことは何ですか?

和田:それは基本となるプロット(物語の筋や仕組み)作りですね。『Re:lation』の場合は課題解決型のサービスなので、プロットとしては「課題に困っている→Re:lationを導入することで解決する」というアウトラインとすることを最初から考えていました。Re:lationが解決する課題はたくさんあります。数ある中から今回取り上げる課題を何にするか?についてはいろいろとアイデアを出しました。ちょうど当社は今年の2月から在宅勤務の導入を始めたこともあり、「テレワーク」でいこうと思いました。

―― 私たちに動画制作の話が下りてきた時には世の中は新型コロナウイルスのニュースが大きく取り上げられていました。それでテレワークを題材にしたのかと思いましたが違ったのですね。

和田:そうです。ただそれだけに「もっと早く制作していれば」という想いを感じながら制作を進めました。その制作ですが、頭の中にあるプロットを形にするために絵コンテを作成していきました。

絵コンテ

―― 絵コンテで苦労したポイントは何でしたか?

和田:コロナ禍の中で撮影をすることになるので、社員同士があまり接触しなくて済むようにしないといけないことに気をつけました。そのため撮影は一人ずつ行うこととしたんです。1シーンに複数人が登場するシーンも一人ずつ撮影してあとで合成しています。

―― この3人でエーッ!って言ってるシーンも、実はブルーバックを背景に1人1人撮影でしたね!

必要なモノ・ヒトを用意する

役者を決める

―― 配役はどうやって決めましたか?

和田:絵コンテで出来上がったキャラクターのイメージに合う人を社員の中から選びました。例えばCMのメインとなる女性キャラクター『Re:子』は、悩める人に解決方法をもってくる存在。彼女が提示したソリューションによって、それまで困っていた人は問題が解決して嬉しい・楽しい気持ちになるわけです。ということは、Re:子自体楽しい雰囲気を持っていないと!と思いました。
今回そのRe:子役をお願いしたメンバーは、いつも笑顔で人を楽しませる雰囲気のある存在。まさに適役だと思いました。

衣装を用意する

―― 衣装はどうやって用意しましたか?

和田:それは正直、絵コンテの時点でもぼやっとしか決まっていなかったんです。Re:子はなんとなくスーツで、それ以外の登場人物は普段の出社時のかっこうかなあと思っていました。でも、社員からの意見でRe:子は『Re:lation』のブランドカラーでもある緑と黒を使ったワンピースにしよう!という話になりました。「緑 黒 ワンピース」で検索して、ピッタリな配色のもの探してくれたみたいです。

和田:その他の社員については、前半はスーツを着てもらって、テレワーク導入に成功したあとは私服やジャケットを脱いだ姿など少しラフなものに変えることにしました。これも社員のアイデアです。

オフィスでのシーン
自宅でテレワークのシーン

和田:些細なことですが、衣装チェンジをすることによってRe:lation導入前後のビフォーアフターを表現しました。

機材を用意する

―― 撮影にはどんなモノが必要なんですか?

和田:今回はこれらを使用しました。

  • ブルーバック背景布
  • 背景布スタンド
  • 撮影用カメラ
  • カメラ用三脚
  • 照明(3個)
  • 照明用三脚(2つ、足りない分は椅子と箱で補った)
  • 録音用ワイヤレスマイク(2個を順番に使用)
社内の休憩スペースに仮設スタジオを設置!

和田:正直、機材はお金勝負なところがあります(笑)。良いものは高いです。例えばカメラ用三脚ですが、しっかりと固定できてかつ自由に調節ができることを重視して選びました。この三脚だけで10万円ぐらいします。カメラは40万円です。安いものはいくらでもありますが、きちんとしたものを撮ろうとするとそれだけコストはかかります。

演技指導の先生にアドバイスをお願いする

―― 役者・衣装・機材の他に用意したものはありますか?

和田:演技指導の先生を探しました。やっぱり皆素人ですからね。でも今回は素人丸出し感のある映像ではなく、「ちゃんと役者が演じきる」ものを目指していました。そのためここはプロのアドバイスが必要と感じました。

たまたまオフィスの近くに演技指導をされている方がおられて、実際に指導されているところを見学させていただきました。すごくよかったので、その先生に指導をお願いしました。

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https://www.stanislavsky-system.com

コロナ禍での撮影でしたので、演技指導はリモートからとしました。結論から言うと、本当にお願いしてよかったですね。ひとつひとつのセリフの前に、そのキャラクターはどういうポジションなのか?どういう脈略があって、その言葉を発しているのか?という問いかけながら指導をしてくださいました。皆それぞれより登場人物になりきることができたと思います。素人だとキャスト(役者)への指示が難しいので、演技指導をプロに依頼するのはかなりおすすめです。

テレワークの課題に悩む
リモートとは思えない迫力のある指導でした。

撮影する

リハーサルをする

――いよいよ撮影ですが、どんな風に進めましたか?

和田:今回はいろいろな制約の中での撮影です。そのため撮り直しは避けなければいけません。そこで絵コンテを元にイメージ通りの撮影ができるか、まずは私一人で一通りの撮影をしてみました。セルフ撮りですね。

セルフ撮りではいろいろな発見がありました。照明・カットの構図・時間や演出について詰めていきました。撮影して、編集してを繰り返して行ったのですがそれだけで何日もかかりましたね。イメージ通りの映像が撮れることがわかった時点で、キャストのみんなを集めてリハーサルを行いました。セルフ撮りを入念にしたので、リハーサルは半日で済みました。撮影したカットをセルフ撮りした映像に当てはめてみんなで観れるようにもしました。

リハーサルの様子

和田:リハーサル映像を確認すると、まだ色々と課題が見つかりました。例えば、演者の顔色が悪く撮れていたりアングルに問題があったり…そういった改善点の意見を出し合った上で本番に臨みました。撮影アングルについてはキャストの意見ももらって細かく調整を行いました。

―― 撮られる方にとってはアングルひとつとっても重要な問題ですね。どうせ撮られるなら、綺麗に映りたいです。

和田:まったくその通りだと思います。キャストメンバーがそうやって本音を伝えてくれたっていうのは、すごくやりやすかった。そういう意味では、撮影の時は雰囲気作りが何より大事かもしれません。

現場の雰囲気作り

―― 撮影現場はどんな雰囲気にしていけば良いんでしょうか?

和田:ズバリ、本音を言える雰囲気ですね。プロの役者さんや芸能人でもない素人をカメラで映すって難しいんですよ。演技の問題だけではなく。というのも、完成したCM動画は誰もが見れるものになるわけです。今回はYouTubeにアップすることを伝えていましたから、みんなの顔は世界中の人に視られる可能性だってあるんです。ともすれば普通は結構抵抗感があると思うんですよね。自分が嫌だと感じている映りで世に出ちゃうかもって考えると、怖気ずいちゃうじゃないですか。

―― 確かにそうですね。特に、今の20代女性は修正機能のあるスマホのカメラアプリを使い慣れています。補正のない一眼レフカメラでの撮影に抵抗があるという声も多いですね。

和田:そうです。ですのでその抵抗感をなくす為には「納得できない時は、撮りなおしてほしい」と本音を言えそうな空気かが重要なんです。安心感がないと、いいものも作れないですから。また、何より全員で楽しみながら撮影ができたことも大きかったです。

―― 撮影中は終始楽しかったですね。

和田:演技の練習中に「今のいい感じ!」「すごい上手!」「かわいい」とか、ポジティブな応援が飛び交ったことも非常によかったと思います。褒められたら楽しくなるだけではなく、演技に対する恥ずかしさも減ります。

和田:それに振り返ってみると、全体的に「これまでに無いものを生み出すぞ!」というムードがありました。機材の設置など、地道で楽ではない工程も沢山ありましたが一人一人が積極的に意見を出し合って動けていましたね。こういうのって、「やらされてる」空気だととたんに現場のテンションが下がってしまう。大きなプロジェクトはある程度トップダウンで進める必要もありますが、メンバーが自主性をもって取り組むことが重要と言えます。

編集する

―― 編集って、どんなソフトを使って何をするんですか?

和田:MacのFinal Cut Pro Xを使用しました。

お値段36,800円

和田:やること自体は切って並べて調整するだけです。だけ、なんですけどいざやっていくと音のバランスを整えたり、色味を調整したり、エフェクトをかけたり、修正したりとやることは様々です。作業にかかった時間は、リハ動画も含めて40時間ぐらいですね。

―― 編集初心者だとちょっと難しそうですか?

和田:仕上げたい動画がどの程度のものかにもよります。例えば、シーンの切り替えもなく1人でカメラに向かってずっと話しているような動画だと、スマホの動画編集アプリでも問題ないかもしれません。でもちゃんと作り込もうとすると機能がそろったものが必要になります。Final Cut Pro Xはプロも映像制作に使用するくらいに高機能です。そのため使いこなすのは大変です。編集の経験者が社内に誰もいなくて、でも品質にはこだわりたい場合は外部の会社へ委託するのもいいと思います。

まとめ

以上がYouTube CMができるまでの道のりと成功の秘訣でした。全くの動画制作ド素人の筆者としては、予想よりも手間や金額がかかるなあという所感でした。
ですが、冒頭の通り今やYouTubeはGoogleの検索エンジンにかわるインターネットの入口になろうとしています。CMだけではなく、より詳しいサービス紹介や採用PR、会社ブログも動画でのアプローチがより効果的になります。そう考えると、自社で動画作りのノウハウを蓄積することはかなり重要です

機材やソフトは一度購入してしまえばその後も使えますし、何より外注する必要がなければその日につくった動画をその日にアップすることも可能です。時勢に合ったものが伸びやすいYouTubeにおいて、内製化によるスピード力は大きな武器になります。

YouTubeの動画は、コンテンツの質だけでなく、量も問われます。一回作って終わりではなく、より多くのコンテンツを生み出していくためにも、続けていくモチベーション、楽しさを維持し続けるのも大切だと実感しました。
オンラインでの営業がますます重要視されるようになった今、改めて動画コンテンツの配信の楽しさ、奥深さが伝われば幸いです。

筆者も頑張りましたよ