【顧客体験向上の事例】優れた顧客対応はCX向上の秘訣だった!

顧客体験の向上は、従来の顧客満足度向上とは少し考え方が違います。顧客体験向上の目的とは、商品やサービス自体の価値だけではなく、顧客と接するすべてのフェーズで優れた価値を提供することより、顧客ロイヤルティを向上させることです。では、顧客体験を向上させるためにはどのような施策が必要なのでしょうか? 今回は顧客体験の概要から必要とされる施策、成功事例などを紹介します。

顧客体験(CX)とは?

顧客体験(カスタマーエクスペリエンス:Customer Experience)は、顧客が商品やサービスに興味を持ち、その商品やサービスを利用するまでの一連の体験を指します。

たとえば、ある自動車のTVCMを目にし、そのスタイリングと性能にとても興味を持ったとしましょう。あなたは次の週末にディーラーを訪れてそのモデルに試乗、営業担当から説明を受け見積もりとパンフレットを入手します。自宅に帰り豪華なパンフレットを見ながら見積額を検討し、他の自動車とも比較して、その自動車の購入を決めました。

さっそく営業担当に連絡して、値引き額の交渉やローンの手続きなど、購入のプロセスに進みます。その後、車庫証明の取得やさまざまな法的な手続きを終え、やがて納車日がやってきます。自動車を受け取りにディーラーを訪れ、営業所長からピカピカに磨かれた新車と豪華な記念品を受け取って見送られ、帰宅の途につきます。ここからディーラーとの長い付き合いが始まり、定期点検や車検、次の自動車を購入するときまで手厚いサポートが続くのです。

少し長くなりましたが、マーケティングの世界ではこれらすべてを顧客体験(CX)と呼んでいます。そして現在のマーケティングでは、顧客体験を向上させることは商品やサービスに対する顧客エンゲージメントを強化することにつながり、LTV(顧客生涯価値)の最大化にもっとも有効な手段だと言われています。

顧客体験を向上させるには?

顧客体験を向上させるには、商品やサービスで価値を提供するだけでなく、顧客と接するすべてのフェーズで優れた価値を提供することが重要です。顧客体験を向上させるには、以下のような手順で顧客との接点をすべて洗い出し、どのような価値が提供できるかを考えていきます。

  • 顧客体験の現状を確認し改善点を洗い出す

はじめに対象とする商品やサービスの顧客体験のポイントを時系列で整理し、足りない顧客体験や逆に余計な顧客体験を洗い出していきます。先述の自動車を購入するケースのように、顧客体験は基本的に時間の流れに沿って進んでいきます。顧客が商品やサービスの情報に触れ、購入、利用と進む行程をカスタマージャーニー、顧客とマーケティング施策が接するポイントをタッチポイントとも呼びますが、これらを整理することにより必要な施策が明確になるのです。またタッチポイントや顧客体験のポイントを時系列に整理した一覧表を、カスタマージャーニーマップと呼びます。

  • 現状の顧客体験ポイントの顧客満足度を調査する

洗い出した顧客体験のポイントが、どれだけ顧客満足につながっているのかを調査します。たとえば広告であれば、商品・広告が「記憶に残ったか」「わかりやすかったか」「魅力的に見えたか」などの項目をアンケート調査で調べます。顧客からネガティブな回答があった項目は問題点を整理し課題を明確にします。

  • 顧客体験の改善策を実行する

顧客体験ポイントを整理した結果、足りない顧客体験ポイントが明確になればカスタマージャーニーマップに追加し、顧客体験の改善策を実行します。また、評判が良くない顧客体験のポイントは、前項で洗い出した課題を解消する方策を実施し、カスタマージャーニー全体の足を引っ張らないように注意しなければなりません。もしそのポイントで顧客が多く離脱するのであれば、思いきってポイントを削除することも考えます。

  • 顧客ロイヤルティの向上を確認する

顧客体験の向上策を実行したら再び顧客アンケートを実施し、顧客体験の向上や顧客ロイヤルティの向上に影響が出ているかを確認します。ただし、顧客体験向上のために実施した施策や改善策は、一朝一夕に効果の出るものではありません。さまざまな施策が効果を発揮し、最終的に顧客ロイヤルティの向上に反映されるまでは、一般的に長い時間がかかるものです。実施したアンケート調査の結果が不十分であっても、根気よくPDCAサイクルを回し時間をかけて改善していきましょう。

顧客体験を向上させた成功事例

最後に、さまざまな施策を実施し顧客体験の向上に成功した企業の事例を紹介します。

基幹システムの刷新が顧客対応のスピードアップにつながった(株式会社ファンケル)

化粧品や健康食品の製造・販売を行う株式会社ファンケルでは、基幹システムを刷新して顧客対応のスピードを上げ、顧客体験の向上に成功しています。ファンケルは古くから化粧品や健康食品の通信販売を手がけ、基幹システムの増改築が繰り返されたためシステムがブラックボックス化していました。

システムの運用体制も外部関係者に依存していたため、内部にノウハウが蓄積せず、長年システムの遅さに苦しんできたと言います。具体的にはECや店舗のPOSなど、販売系システムと基幹システムとのリアルタイム同期ができておらず、顧客情報の伝達が遅かったことがありました。ポイント制度やロイヤルプログラムの改定しようにも、ブラックボックス化したシステムでは改修までの時間が見通せなかったことなどが挙げられます。

2020年には創業から40周年を迎えるにあたり、顧客接点の見直しと業務内容の大幅な改善に取り組みました。社内の基幹システムの大規模な改修や、通販とECのデータ統合、店舗でもデジタルとリアルを併せた接客を実現できるように全社でDX化を推進しました。オンラインや実店舗、システム部門でも顧客体験(お客様の喜び)の向上を目指して、業務内容の大幅な刷新をしたのです。

結果として基幹システムの刷新は顧客対応のスピードアップにつながり、顧客満足度を向上させることに成功しました。また、営業施策としても「買って買って」というプッシュ型施策を強めるのではなく「顧客体験を最大化できるか」という軸でマーケティングを実行しています。ファンケルはCXとDXの両輪で、顧客の「一生のパートナー」になるように施策を進めているのです。

一人ひとりに向き合った対応で顧客体験を向上(株式会社アカツキ福岡)

株式会社アカツキは、モバイルゲーム事業とライブエクスペリエンス事業を展開するIT企業です。また、株式会社アカツキ福岡は、モバイルゲーム事業の問い合わせ対応と開発されたゲームの検証事業、スマートフォンゲームの運営をしています。

株式会社アカツキ福岡では、顧客からの問い合わせ対応をCS(カスタマーサポート)ではなく、CXと呼んでいます。顧客からの問い合わせに対してただ対応するだけではなく「感動体験を届け、心を動かすこと」を追求しているからです。

近年はゲーム業界も競争が激化しているので、顧客サポート=ファンを作っていくことだと考え、CX向上のために特別に社内体制を構築しています。問い合わせ管理システムには株式会社インゲージの「Re:lation(リレーション)」を活用して顧客体験の充実に努めています。Re:lationの導入を決めた主なポイントは2つあり、1つ目は問い合わせのメール受信から返答までを一つのツールで行えること。2つ目は利用料やメンバーに対する教育コストが抑えられることだったそうです。

また、サポート担当が不在の深夜や休日でも問い合わせは受け付けているため、自動返信の機能が必須となっていました。CX向上のためには、たとえメールであっても「確かに受け付けました」という返信が必要だと考えていたのです。Re:lationには自動返信機能が実装されており、問い合わせ対応が一つのツールで完結することや、利用料もリーズナブルで操作がわかりやすかったことが決め手となり導入したのです。

商品やサービスがいかに優れていたとしても、購入後の顧客対応が貧弱ではCXの向上は望めません。アカツキ福岡では、一人ひとりに向き合った対応で高品質なCXを実現しファンを増やし続けているのです。

顧客対応は常にCXの最前線にある

さまざまな施策で向上させてきた顧客体験を、サポートの時点でがっかりさせてしまうのは、とてももったいないことです。顧客満足度の高い顧客体験を実現するためにも、問い合わせ管理システムの導入による高品質な顧客対応を目指したいものです。