電話でのクレーム対応を顧客満足につなげるには?コツや適切な言い回しを例文つきで解説

お客様からの問い合わせを受け付けるコールセンターやヘルプデスクにおいてクレーム対応は避けて通れません。応対者がストレスを感じやすく、ネガティブな印象を持たれやすいクレーム対応ですが、お客様の不満や要求に上手く対応できれば顧客満足度の向上、企業のイメージアップも可能です。この記事では、電話でのクレーム対応に焦点を当てて、クレーム対応を顧客満足度アップやビジネスチャンスにつなげるためのコツを具体的な言い回し例文を交えながら解説します。

クレーム対応の基本

まずはクレーム対応について基本的な理解を深めましょう。ここではクレームの基礎知識やクレーム対応の重要性を解説します。

クレーム対応とは?

クレーム対応とはコールセンターやヘルプデスクにおいて、お客様の要望や不満を聞いたうえで、謝罪や解決策を提示するまでの一連の対応を指します。本来クレームは、要求、請求、主張、申し立てといった企業からの対応を要求するという意味を持つ「claim」が語源ですが、お客様の不平や不満などの感情を訴える「苦情」を含めてクレームと呼ぶのが一般的です。

クレーム対応では、まずはお客様の申し入れ内容や事実を正しく理解し、誠実な姿勢で対応にあたることが不可欠です。クレームに真摯に対応することで、話を聞いて事情を理解してもらえた、謝罪の言葉があったなど、企業イメージや顧客満足度を高められます。

また、クレーム対応のなかでお客様から寄せられる要望や意見は、商品サービスの問題点や改善ポイントを発見するための重要なヒントであることも多いです。クレーム内容は定期的に分析し、社内関係者に共有することで、商品サービスの改善や新商品開発に役立てられます。

逆に途中でお客様の話を聞き流したり、遮ったり、イライラして言い返してしまったりと、応対者が企業窓口として不誠実な態度をとってしまえば、お客様の企業に対する印象は大きく悪化するでしょう。クレーム対応を面倒なもの、ネガティブなものととらえるのではなく、自社商品やサービスを改善するための貴重なビジネスチャンスとして、前向きにクレームから学ぶ姿勢を持つことが重要です。

クレームは一握りのお客様だけ

商品やサービスに不平や不満、企業に対して要望がある場合でも、実際にコールセンターやヘルプデスクに連絡してくるお客様はごくわずかです。多くのお客様は商品サービスに対する不満を感じていたとしても、企業に直接伝えることはなく、ただ商品やサービスの利用をやめてしまう「サイレントクレーマー」になります。

コールセンターやヘルプデスクでクレーム対応にかかる時間や手間を考えれば、一見するとサイレントクレーマーは手間がかからず、ありがたい存在に思えます。しかし、クレームのなかから自社商品やサービスの問題点、改善ポイントに気づけず、せっかくのビジネスチャンスを失いかねません。また、サイレントクレーマーによるネガティブな口コミが拡散することで、既存のお客様や潜在的なお客様を失う危険も考えられます。

表面化しにくいサイレントクレーマーの不満にいち早く気づき、サイレントクレーマーを減少させる、発生させないためには、お客様の不満の種を一つずつ解消していくことが重要です。そのため、個々のクレームに真摯に対応しながら、商品サービスを継続的に改善する取り組みは欠かせないのです。

クレームの種類

一口に「クレーム」といっても内容や原因はさまざまで、一般的に「商品サービスに起因するもの」「コミュニケーションに起因するもの」「不利益を伴う悪質なもの」の3種類に大別されます。ここからは各クレームの特徴や対応パターンを解説します。

企業の商品やサービスそのものに起因するもの

商品の使い方がわからない、商品が届かない、商品に異物が混入しているなど、比較的事象や原因が明確であり、日常的に多く発生するクレームです。

お客様の勘違いや主観に基づくクレームもありますが、企業側の過失に対する正当な要求も多く含まれるので適切な対応が重要です。このパターンのクレームに対しては、お客様に真摯に対応するだけでなく、クレームの原因となった問題を正しく特定、解消するような働きかけが求められます。

そのため、迅速かつ的確に対応できるように、よくあるクレームを整理し、内容ごとに対応マニュアルを整備するのが有効です。

接客態度などお客様とのコミュニケーションに起因するもの

接客態度が悪い、待ち時間が長すぎる、接客が強引で無理やり購入させられたなど、従業員とお客様とのコミュニケーションに起因して発生するクレームです。実際に接客態度が問題だった場合もありますが、企業とお客様の価値観や認識の違いがクレームに発展していることも多くみられます。

まずは、お客様の申し入れ内容を丁寧に聞き取り、認識のズレにつながった部分を洗い出すとともに、適宜社内の関連部署にフィードバックすることで、ズレを防ぐための事前対策を検討するのも重要です。

企業の不利益や業務妨害を伴う悪質なもの

過剰な要求や事実無根の要求、八つ当たりやストレス解消を目的とした要求など、企業に不利益をもたらす可能性のある悪質なクレームです。

このパターンのクレームは、前述した2つのクレームと明確に区別し、毅然とした態度で対応します。一次対応者での電話応対が長時間化しそうな場合は一人で抱えこまず、早めに上司に相談するとともに、あまりにも理不尽なクレームが継続する場合は弁護士など専門家に相談することも検討しましょう。

電話でのクレーム対応のコツ4選

ここからは電話でのクレーム対応のコツとして、すぐに実践できるポイントを4つ解説します。

お客様の話を最後まで聞く

メールやチャットではなく、わざわざ電話をかけてくるお客様は感情的になっていることも多いです。お客様の話し方につられて感情的になったり、いい加減に対応したりと不適切な対応をとると、後々大きなトラブルになりかねません。お客様の話をよく聞いて「何が問題なのか」「どんな不満・不快を感じているのか」を丁寧に対応しましょう。

追加の確認や反論したいことがあったとしても、途中で口を挟まずお客様が最後まで伝え終わったと感じるまで、話し終えてもらうことが重要です。この時、ただ話を聞くだけではなく、

「○○ということですね、この度はご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」

「○○様のご指摘は、ごもっともでございます」

などのお客様に寄り添い、共感や理解を伝えるような相槌を挟みましょう。

また、

「恐れ入りますが」

「お役に立てず心苦しいのですが」

「私の理解力が不足して申し訳ないのですが」

などのクッションになる言葉を使いながら会話を進めるのも有効です。

入電後、まずは最後まで落ち着いて話を聞くことで、お客様の不満や怒りがトーンダウンすることもあります。「自分の話をきちんと聞いて理解してくれる」という安心感を持たせ、信頼関係を構築することがスムーズな対応につなげるコツです。

謝罪しつつ事実を確認する

電話でのやり取りの早い段階で、お客様に不快な思いをさせたこと、わざわざ電話の手間と時間をかけさせたことに対して謝罪の気持ちを伝えることが重要です。

なお、事実確認が途中の場合や責任の所在が曖昧な場合は、企業の非を全面的に謝罪するのではなく、

「この度はご不快な思いをおかけして、大変申し訳ございません」

「わざわざご連絡いただくお手数をおかけしたことを重ねてお詫び申し上げます」

などと謝罪する範囲を限定しておくのがポイントです。

また、客観的な視点からクレーム内容を確認することが重要です。お客様の言い分だけでなく、購入履歴を確認したり、使い方を確認したりすることで、お客様側の認識誤りや間違いがあることに気づく場合もあります。

たとえば、

「誠実に対応させていただきたいので、もう一度確認させていただけますでしょうか」

などのクッションになる言葉を挟みながら質問をすると、事実確認をスムーズに進められます。また、お客様の間違いや勘違いを指摘しなければならない場合は、

「無事に解決できたようで安心致しました」

「今後はお客様の誤解を招くことのないよう、〇〇様のご意見は然るべき部署に申し伝えておきます」

など、お客様の非を追求するような直接的な表現を避けることが重要です。

相手の要求に対する解決策を提示する

クレーム内容に合わせて具体的な解決策を提示しますが、この時、

「商品代金の返金、もしくは新しい商品への交換の対応をさせていただきたいのですが、どちらがよろしいでしょうか」

など複数の選択肢からお客様が選択できるようにすると、押し付け感がなく、スマートな印象になります。

なお、解決策を提示する際に、お客様の不利益に対して最大の誠意を示しつつも、自社ルールや法律に沿ったものであるかを十分に確認し、過度な対応をしないことがポイントです。

お客様からの申し入れ内容をお断りしなければならない場合は、お客様の立場に立って誠実に対応し、

「○○様のご要望に可能な限り寄り添いたいという気持ちはありますが、弊社としてはこれ以上のご案内はできかねます」

などお客様が納得するまで丁寧に説明を繰り返しましょう。

また、一連のクレーム対応が完了した後は、やり取りの内容や対応方法を対応履歴として残すことが重要です。商品サービス、販売・マーケティングなどの改善ヒントを発掘できるだけでなく、応対ルールやマニュアルに反映することでクレーム対応の品質平準化や顧客満足度向上につながります。

クレーム対応が上手い人を真似る

クレーム対応が上手いといわれる人には共通の特徴があります。たとえば、焦らない、真摯な姿勢を崩さない、話を遮らない、相手への共感を表現する、粘り強く対応するなどです。

クレーム対応をスムーズに進めるには上手い人の真似をするのが近道です。同じ部署で上手くクレームに対応している応対者がいれば、リアルタイムでモニタリングしたり、通話録音を確認したりと、細かな気配り、特徴的な言い回しはないかなどを確認しましょう。

また、クレーム対応のコツを洗い出して社内FAQやトークスクリプト・マニュアルなどに反映することで、問い合わせ対応部署全体の応対品質向上にもつなげられるでしょう。

適切なクレーム対応は会社の利益につながる

クレーム対応の基本はお客様の気持ちや立場に寄り添うことです。そのためには、何に困っているのか、何を期待しているのかを真摯な姿勢でヒアリングし、的確な解決策を提示することが重要です。ネガティブなイメージを持たれがちなクレーム対応ですが、顧客満足度向上につながるビジネスチャンスととらえ、中長期的なリピーターとなりうる企業のファン獲得、企業収益の向上を実現しましょう。