業務効率の向上には「業務の見える化」が必要とはよく聞きますが、業務の見える化とはどのように行えばよいのでしょうか? また業務が見える化されていないと、どのようなデメリット(問題)が発生するのでしょうか? 今回は業務の見える化ができていないと発生する問題を起点に、業務の見える化のメリットや、見える化実施のポイント・方法について解説します。
目次
業務の見える化とは何か
業務の見える化とは、従業員の業務について「いつ」「どこで」「誰が」「何をしているか」、またその「進捗」と「状況」を可視化して共有できる状態を作ることです。業務の見える化が必要だといわれるのは、その業務の「進捗」と「状況」がほかの人に見えにくく(可視化されておらず)共有ができない場合です。
業務の見える化ができていないことで発生する一番の問題は、業務の属人化だといわれています。属人化とは、ある特定の業務についての内容や進捗度合い、状況などの情報を、担当者ひとりが抱え込んでしまっている状況を言います。つまり仕事が見える化されている状況とは「共有化されている状態」、仕事が見える化されていない状況とは「業務が属人化した状態」と言うわけです。
業務が見える化できていないことで、属人化のほかにはどのような問題やデメリットがあるのか、次章で見ていきましょう。
業務の見える化ができていない場合のデメリット
業務の見える化ができていないことで発生するデメリットは、大きく3つあります。属人化を含むこれらのデメリットは、事業の効率化や企業の評判に多大な悪影響を及ぼす可能性があります。
業務の属人化が進む
今までに述べたように、業務が見えない状況を解消できないと、業務の属人化が進みます。業務の属人化の問題は、担当者が病欠や離職をしてしまったときに、容易に代替がきかないということで発覚することが多いようです。このような問題は業務の効率的な遂行の妨げとなり、最適な人員配置も困難にします。業務が共有化されていれば、遅れている業務はほかの人員と手分けして効率的に進められますが、属人化が進んだ業務は非効率的になっていることも多く、問題の解決は時間がかかります。
トラブル・ミスが多発する
上記のように業務が周りから見えないと、同僚からの協力も得られず、顧客への対応不備やミスが多くなる可能性があります。そして、人間はどうしてもミスを隠したくなるものです。このような意識は問題への適切な対処の妨げとなり、ミスの放置はトラブルにつながります。特に個人客とのトラブルは、エスカレーション(上司に報告、もしくは相談して判断を仰ぐ)の遅れが取り返しのつかない結果を招くこともあります。SNSが発達した現代では、このような対応の遅れや不備が、企業の評判に悪影響を与えることも少なくありません。
業務の非効率化・生産性低下を招く
周りから仕事が見えないということは、上長からも仕事が見えにくいということです。上長は今まで周りから見えなかったその業務が、果たして効率的だったのか非効率的だったのかも分からず、業務の進め方についてアドバイスを与えることもできません。このような業務の非効率化は人員の移動や最適配置にも影響を与え、部署全体の生産性を下げてしまいます。
業務の見える化ができている場合のメリット
一方、業務を見える化できていると、数多くのメリットがあります。
属人化が解消される
業務の見える化ができていると、一番の問題である属人化が解決されます。顧客トラブルがあった場合にも迅速な対処が可能になり、不必要に問題が大きくなるリスクを負わなくてすみます。また人員の最適配置はもちろん、急な病欠や離職時に素早く代替人員を補充することも可能です。
トラブル・ミスの削減につながる
昔から「報連相」という言葉がありますが、報告や連絡、相談が無いと業務が属人化します。報連相が見える化されることにより、どういった状況なのかを上長が把握でき、トラブルやミスを発見しやすく、対処も迅速に行なうことも可能なのです。特に顧客とのトラブルは問題が大きくならないうちに対処することが一番重要です。業務の見える化によって部署内の全員で問題を共有できるようになるため、アドバイスしてもらったり対処の方法も相談しやすかったりしますので、その結果トラブルやミスの削減に役立ちます。
業務量の平準化が可能になる
業務内容によっては、通常期と一時的に業務量が増加する繁忙期があります。特に一般顧客を相手にしているECサイトでは、新商品の発売時に一時的に業務量が増えることはよくある話です。このような場合には上長からの適切な指示や、同僚との手分けによって業務効率を落とさない対応が求められます。業務の見える化は、個人の業務量を明らかにすることで偏りを防ぎ、業務量の平準化を可能にするのです。
業務効率化・生産性向上・コスト削減が可能になる
業務の見える化は各個人の業務を効率化させ、部署全体の生産性を向上させます。また業務量の平準化は、残業代や休日出勤手当などの発生も抑制できるので、直接のコスト削減にも貢献します。
従業員の評価が適正化する
個人の業務内容が明らかになることにより、従業員を適正に評価できます。評価の適正化は人員の最適配置にも役立ちます。
仕事を見える化させるポイント
ひと口に仕事の見える化といっても、さまざまなやり方があります。ここでは仕事を見える化させるポイントを見ていきましょう。
課題を洗い出し、ゴールを明確にする
まずは現状の業務について問題となっている点や課題を洗い出し、解決することによって実現するゴールを明確にしましょう。これは業務の見える化の目的を共有し、全員のモチベーションを上げるために大切なことです。業務担当者は日ごろの業務の中で、「ここが問題で、こうやったら解決できるのに」という問題意識を少なからず持っているものです。小集団活動をして、このような問題意識を口にできる機会を設けることが大切です。
業務フローを明確にする
現在行っている業務のフローを明確にし、ジャッジや承認のポイントをメンバー全員で確認します。この作業により、隠れた非効率的な業務や無駄なルーティンなどが見つかります。今までブラックボックスだった業務フローを中心に、詳細に手順を分解していくとよいでしょう。
ノウハウやハウツーを整理し全員が見られる状況にする
それぞれのメンバーが持っている業務ノウハウやハウツーなどを整理し、FAQ(よくある質問とその回答)集にまとめたら、その資料をいつでも見られるように整備することが大切です。このような資料はどこかの書庫にしまい込むのではなく、全員がすぐに見られる社内のWebサイトに掲示しておくのがよいでしょう。
ただし、業務の運用ルールを決めたり資料を整備したりするだけではなかなか定着せず、見える化を継続することが難しいことも事実です。その場合はツールを導入し、全員がルールを自然に順守できるようにすることが重要です。
ツールの導入例とその効果
顧客からの問い合わせ件数が多く、ミスがトラブルに発展することも多いのがカスタマーサポート部門です。このような部門では、顧客とのやりとりにメール共有システムを導入するのが効果的です。
メール共有システムでは、メールを部門のメンバー全員で共有し、対応漏れや遅れ、二重対応などのステータス管理や返信文のダブルチェック、上長による承認ができます。担当者によって応対や謝罪文などに差が出ないようにチェックすることで安定した品質の顧客対応ができ、トラブル防止と効率向上につながります。
また、全員で顧客対応の進捗や履歴をチェックできるので、スタッフの病欠や突然の離職などにも対応できます。メール共有システムは業務の属人化を防止し、業務量の平準化や品質の安定、部門全体の効率向上を可能にします。
まとめ:仕事を見える化する早道はシステムの導入
ルールを決めるのは簡単ですが、継続してそのルールを守っていくのは容易なことではありません。仕事の見える化には多くのメリットがありますが、見える化する努力を続けるのも同じく容易なことではありません。全員が特別に意識することなくルールを守り、効率化の効果を継続させるためには、メール共有システムを導入するのが早道だと言えるでしょう。