ECサイト運営に必要となる業務は大きく9つに分けられます。それぞれの業務内容やフローをしっかりとおさえることで安定したECサイト運営ができるだけでなく、業務改善や効率化によるコスト削減や売り上げアップにもつなげることが可能です。この記事ではECサイト運営の基本となる業務内容やポイント、ECサイトの円滑な運営に欠かせない4つのスキルを解説します。
目次
ECサイト運営とは?
ECサイト運営にはECサイト自体の構築やプロモーション、商品の在庫管理、受発注手続き、問い合わせ対応などさまざまな業務があります。大まかに業務内容を分類すると「フロント業務(マーケティング業務)」と「バックエンド業務(フルフィルメント業務)」の2種類です。
どちらも重要な業務であり「バックエンド業務」をコスト削減・業務効率化して経営資源を確保しながら、「フロント業務」に経営資源を投入することで売り上げアップを目指すのが基本的な戦略です。
フロント業務(マーケティング業務)
フロント業務はいわゆるマーケティング活動のことで、今後売れ筋となりそうな商品を企画し仕入れて、サイトを更新、お客様に紹介して販促する一連の活動を指します。
商品やECサイトデザインなどお客様に見える部分にかかわる業務で、訪問者数(アクセス数)や購入率(CVR)などに影響を与える活動です。訪問者数はECサイトを訪れたお客様数、購入率はECサイトに訪問したお客様のうち商品を実際に購入したお客様の割合を指す指標で、これらの指標を見ながら改善にあたります。
実店舗と異なりECサイトでは「通りすがりに外観や雰囲気が気になり店舗を利用する」といった利用方法がないのが特徴で、「目的の商品を検索して探した結果、店舗を利用する」というのが一般的です。そのため、フロント業務ではターゲットに響く魅力的な商品をいかに揃えられるか、ECサイトの存在を知ってもらえるか、一度利用してくれたお客様との接点を継続できるかといった取り組みが売り上げに直結します。
バックエンド業務(フルフィルメント業務)
バックエンド業務は商品が購入されたあと、受注処理や在庫管理、出荷や配送、アフターフォローなど一連の業務プロセスを指し、フルフィルメントとも呼ばれます。定型化された事務作業が中心で、ECサイト立ち上げ時は少人数で十分に対応できる業務内容ですが、規模が拡大するにつれてバックエンド業務の比重は大きくなるのが一般的です。そのため、いかにバックエンド業務を最適化し、フロント業務に注力できるかが売り上げアップの鍵を握ります。
一方で、バックエンド業務は商品を購入したお客様と密接にかかわる業務内容が中心であり、お客様の顧客満足度や顧客体験に直結します。ミスなく商品をお届けする、問い合わせに真摯に対応するなど、スムーズ、かつ安心して取引ができればリピート購入につながりやすく、売り上げアップを期待できます。
ECサイト運営の9つの基本的な業務内容
フロント業務とバックエンド業務をさらに細分化すると、フロント業務に属する4つの業務とバックエンド業務に属する5つの業務に分けられます。
- フロント業務
「商品企画」「ECサイト制作・更新管理」「プロモーション」「仕入れ・検品」
- バックエンド業務
「受注」「在庫管理」「梱包・出荷」「発送」「お客様対応・アフターフォロー」
各業務が連携することで、お客様に対する一貫した対応が優れた顧客体験となり、リピーター獲得につながります。ここからは各業務の内容をより具体的に解説します。
なお、販売する商品や運用方針によって各業務の作業内容は異なります。あくまでも参考にご覧ください。
商品企画
商品企画は、どんな商品が売れるのかのアイデアをまとめ、リサーチから販売計画の立案をする業務で、いわゆるマーケティング業務です。ECサイトのターゲットやコンセプト、およびトレンドや季節などさまざまな要素を考慮しながら売れ筋商品を検討し、仕入れ量や販売計画など原価率や利益率を踏まえた販売計画を立てます。
良い商品を企画できればお客様に商品をアピールしやすいのはもちろん、SNSで拡散されやすいという効果も期待できます。インターネットが日常生活の隅々まで浸透した現代社会において口コミ効果は絶大であり、うまく口コミを活用することでプロモーションにかかる費用をおさえて、宣伝効果を最大化することが可能です。
ECサイト制作・更新管理
ECサイトの制作・更新管理は、お客様にとって魅力的な「売り場」を作る業務です。簡易なECサイトをすぐに用意したいのであればBASEやSTORESなどの無料ECサイトカートシステムを使うのが便利です。
独自色を出して凝ったサイトを作る場合でも、有料ECサイトカートシステムのASPツールを利用すれば月額数千円で見栄えの良いサイトを作れます。ECサイト全体の雰囲気はお客様の信頼感や安心感にもつながるため、商品イメージやコンセプトに合致し、ターゲットとなる顧客層が使いやすいサイトにすることを意識しましょう。
また、ECサイトは作って終わりではありません。定期的に更新して商品の良さを正しくアピールすることが重要です。更新業務には、たとえば仕入れた商品の「ささげ業務(撮影、採寸、原稿作成)」を行い、ECサイトに登録する業務などがあります。
実店舗と異なりECサイトでは、ユーザーが実際に商品を手に取って確認できません。特に服や靴はECサイト上で試着ができないため、サイズ感が把握できるように複数モデルの着用イメージ写真を掲載したり、サイズ感や色味、質感をうまく伝えるための説明文を掲載したりといった工夫が必要です。
プロモーション
ECサイトに商品情報をアップロードしただけでは、狙い通りに商品が売れることはほぼありません。広告、検索エンジン最適化(SEO)、SNS運用といったWebマーケティングを活用し、ターゲット顧客に訴求することが重要です。
広告出稿(Google広告やYahoo!広告、アフィリエイト広告など)の場合は、すぐに集客につながりスポット的な効果が出やすいメリットはありますが、高額な広告出稿費が必要です。そのため、小規模事業者では採算が合わないことが多くなります。
一方で、商品ページやブログ記事のSEO施策を実施したり、TwitterやFacebook、InstagramなどのSNSで発信したりといった活動は、比較的低コストで実施できるのが魅力です。ただし、短期的な効果が出にくく、ノウハウが必要だったり、運営に負荷がかかったりと、いったことがあります。
複数の宣伝方法を組み合わせるのも効果的ですので、売り上げを最大化するために必要な宣伝方法を選択しましょう。
仕入れ・検品
仕入れ・検品は、仕入れ先や工場に商品を注文し入荷するまでの一連の業務です。入荷した商品と数量を在庫管理台帳に反映したり、検品したりして商品に破損や欠損がないかを確認します。
仕入れについては突然の「バズリ」に柔軟に対応できるように、ある程度の在庫を確保しておく、仕入先を複数持っておくなどが重要です。また、商品納入後の検品作業をしっかりしておくことで、お客様へ商品発送後のクレームを減らすことにつながります。
受注
受注は、ECサイト画面でお客様から注文があった場合に注文内容や届け先などを確認したうえで、注文確認メールの送信、在庫確認、出荷指示を行う業務です。シンプルかつ定型化で自動化しやすい業務である一方、お客様もミスが発生しない前提でいるため、お客様に不安感を持たせないようスピーディーで正確な作業が重要です。
在庫管理
商品在庫は、商品の過不足を管理する業務です。在庫を抱えすぎていると保管場所を圧迫し、保管費用や維持費が発生します。また、「旬」の時期が過ぎてしまえば最終的に処分しなければならず、余計な処分コストがかかる可能性もあります。
逆に在庫が不足していると受発注機会を逃してしまったり、お客様の希望数や納期に応えられず信用を失ってしまったりといった課題が考えられます。
過剰や過小在庫にならず自社に最適な在庫を維持しつつ、商品企画と同様に世間のニーズやトレンドをおさえて、適切な在庫を管理することが重要です。
梱包・出荷
梱包・出荷は、受注時の出荷指示に基づき商品をピッキングし、発送用に梱包する作業です。ECサイトごとに個性が出やすい業務であり、競合店との差別化ポイントとなります。具体的には商品の大きさ、割れやすさや壊れやすさなど商品特性にあった梱包材や緩衝材を選ぶなどの業務です。
ただし、ECサイト運営の利益を最大化するためには梱包・出荷にかかるコストは最低限におさえ、コストと品質の両面をバランスよく実現することが重要です。
発送
発送は、梱包した商品を発送業者に引き渡す業務です。引き渡しが完了したら、お客様向けに発送業者情報、伝票番号などを含めて発送完了メールを送付します。
発送業務はメール便、宅配便など配送方法や送料はさまざまですので、比較検討しながら最適な配送業者を選択するのがポイントです。配送業者を1社に絞るのではなく、商品サイズや特性に合わせて複数業者や複数サービスを使い分けるのも良いでしょう。
また、代金引換を決済方法として用意する場合は、配送業者に対して事前申請が必要です。ECサイトの開店1カ月から2週間前など、余裕を持って手続きを済ませておくことが重要です。
お客様対応・アフターフォロー
お客様からの問い合わせに対応したり、購入後のお客様に対して使い勝手の確認や返品交換の対応をしたりといった業務です。メールでのやり取りが多いですが、電話やチャット、SNSなど複数の対応チャネルを持つ場合もあります。
お客様と直接コミュニケーションをとれる貴重な顧客接点であり、顧客満足度の向上、顧客ロイヤルティの獲得に欠かせない業務です。お客様対応・アフターフォローの際はECサイトの顔として真摯で誠実な対応が求められます。
ECサイト運営で求められる4つのスキルとは?
ECサイト運営ではWebやシステムに関する知識やマーケティング、商品販売、受発注といった小売店の知識など必要な知識やスキルの範囲は膨大です。
大規模にECサイトを運営する場合は複数人で分業できますが、1人や少人数で運営している場合は、一連の業務フローを幅広くカバーできるように体系的なスキルを習得しておきましょう。中でもWebマーケティング、クリエイティブ、商品企画、カスタマーサポートの4つのスキルが重要とされています。
- Webマーケティング
具体的にはSEOやweb広告運用、SNS運用、メールマーケティングなどのスキルです。売り上げを維持し拡大するためには、数多くのECサイトの中から自社ECサイトにアクセスしてもらえるようにする活動が欠かせません。どのWebマーケティング手法が最適なのかはECサイトごとに異なるため、さまざまな手法を試しながら効果検証をしていく必要があります。
- クリエイティブ
ECサイトのデザイン(顧客動線の設計)や、ECサイトに掲載する商品画像と商品説明の作成に関するスキルです。お客様のニーズを正しく理解し「このECサイトで商品を買いたい」と思ってもらえれば、売り上げにつなげられます。
- 商品企画
ECサイト運営では売れ筋商品を見極め、過不足なく在庫を用意することが重要です。売れそうだからと直感で判断するのではなく、入念な市場調査のうえで、ターゲットニーズ、トレンド、季節なども考慮しながら商品の開発や仕入れをします。
- カスタマーサポート
お客様からの問い合わせに電話やメール、チャット、SNSなどを活用して対応する業務です。「○○月○○日までに商品を届けてほしい」「商品機能の詳細を教えてほしい」といった問い合わせのほか、「商品に不具合がある」「返品したい」など要望やクレームの対応も含みます。
カスタマーサポートの対応の良し悪しで企業イメージや顧客満足度に影響を与えるため、スピード、丁寧さ、誠実さ、正確さなど高い応対スキルが求められます。
売り上げアップの鍵はお客様対応にあり
数あるECサイト運営業務の中でも特に重要なのは、問い合わせ対応などのお客様対応です。どんなに商品が優れていたり、見やすいサイトデザインで、ECサイトとしての魅力があっても、お客様対応がおろそかでは一見客ばかりでリピート購入につながりません。
実店舗であれば、店先を通る人に「いらっしゃいませ!」という挨拶、「○○がおすすめですよ」「△△な使い方もできますよ」といった提案、質問への回答などのお客様対応が日常的に行われており、これらが常連客を生み出します。
ECサイトにおけるお客様対応はカスタマーサポートの担う領域であり、お客様対応を充実させることで、中長期に渡って安定した売り上げの維持や強化に貢献することが可能です。
お客様対応は迅速かつ丁寧な対応が必要です。ただし、お客様ごとに個別の対応するためには手間も時間もかかります。お客様対応の応対品質と効率化を両立させるためには、専用の問い合わせ管理ツール(問い合わせ管理システム)を導入するのが近道です。お客様からのお問い合わせに対応する業務を効率化し、より満足度の高いショピング体験を提供できるでしょう。
問い合わせ管理システムは近年多くの製品が登場しており、機能や使い勝手はさまざまです。株式会社インゲージの「Re:lation(リレーション)」では、チーム内で案件内容、進捗状況を共有するだけでなく、ラベル機能で案件を仕分けたり、タイムラインで過去のやり取りを確認できたりと、業務効率化や品質向上につながる機能が充実しています。
また、グッドデザイン賞受賞の使いやすい操作性により、ITに苦手意識を持つ担当者でも直観的に操作でき、問い合わせ管理の業務効率は飛躍的に向上します。問い合わせ管理システムの導入を検討する際は、機能や操作性をあらかじめ確認するとともに、導入実績を確認するなど、自社のニーズにマッチする製品を選ぶのがポイントです。